こおりひめ

madoka

第1話


新緑。太陽が高く日差しが少しづつ強くなってきた頃。

空には甚だしく積乱雲が居座っている。

暖かい草原に獣道のようなものが延びている。

それは誰かが踏み倒した後のような道で、決して足場は良くない。

ピエロ姿の男と少し土汚れのある少女が歩いていた。

二人の後方にはこの世界一番の城とぽっかりと穴が空いた森あった。


「ロイヤルっ!まだつかないの?」


陽炎が燃える道の最中で少女が問う。


「もうちょっとだよ。がんばれ!アイスちゃん!…ほら!見えてきた!」


ロイヤルと呼ばれたピエロが指をさす方向には荘厳な屋敷があった。

重厚なフェンスを開け、ギィという音と共に屋敷の敷地に入る。

ロイヤルは屋敷の扉の前にあるドアチャイムを鳴らす。


「ねぇ!ティオ!居る!?」


数分後、屋敷の住人が出てきた。

ティオと呼ばれた住人は品性のある恰好をしていた。

すっかり成人した大人の体つきに、落ち着いた色のドレスはその美貌を艶やかに彩る。

肩甲骨まである髪は耳の下で結ばれて、肩に掛けるように前方へ持ってきている。

膨らんだ胸元には懐中時計を一つ提げていた。


「なんでしょうか?私に何か用が…ってロイヤル!?あなた、どうしてここに?」


「久しぶり。この子はアイス。」


「あ…初めまして…」


アイスはロイヤルに半身を隠しながら、顔だけを出して挨拶をした。


「初めましてお嬢さん。それと、先刻の爆発音は一体…?」


「話せば長くなるんだけど…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る