8皿目 軍艦盛り合わせ
うわァ~、海だ海、海だよ、ヒロ先生! あっちこもっちも海!
あ、あそこ、かき氷売ってる! あっちは焼きそば売ってる!
海! かき氷! 焼きそば! あ、浮き輪! 浮き輪、膨らませなきゃ!
うあ、あ、風つよ! 帽子、帽子飛んじゃう!
日焼け止め! あ、スマホスマホ!
海、海ぃ~い!!!!!
*
ほ~い、帽子拾ったよ~。女子高生は元気だな~。
しっかし、いい海じゃない! クーラーボックスにぎっちぎちに缶ビール詰め込んできた甲斐があるわ! 女子高生くん、あとで焼きそばを買いに行こう! 海を見ながらの冷えたビールに最高のつまみだよ!
あとはネッシーとか、浮かんでこないかなぁ? ねえ、ポニテっ娘ちゃん……?
え、ちょっと待って、なにその胸のスイカ。え、ナニ、天然モノ?
……けしからん! けしからんぞ、爽やかなヒマワリ・イエローの三角ビキニからこぼれんばかりのスイカップとは!
あ、逃げるな! 揉ませろ、触らせろ! 先輩だぞ!
そうそう、大人しくしてなさい。さて。
……ふむ、この手ごたえ、Fはあると見た。さあ、これ以上揉まれたくなかったら自己申告しなさい。E? それともF?
*
あ、えっと、わたし、結城君の高校生の時の同級生で……
あの、今回はありがとうございます、知らない方の別荘に誘っていただくなんて……
はい、わたしはこっちの大学に進学したんです。
えっと、ヒロ君が家庭教師している子のお母さま、ですよね?
はい、家庭教師してる、っていうのは聞いてて。
お医者さんなんですね。すごい。
ヒロ君がこっちに帰ってくるとき、一緒に海に行こうっていう話はしてて。
……こんなにたくさんの人たちが来ると思わなかったけど。
あ、でもヒロ君の大学がどんなとこかわかって良かったです。
これからもイベントの時は呼んでくれるみたいで。インカレ、っていうのかな。
……なんか地元にずっといると、外に出て行った人たちにおいていかれたきになっちゃうんですよね。
あ、ごめんなさい、なんか愚痴になっちゃって。
傾聴? お医者さんに必要なスキル? へえ、いろんなことが必要なんですね。
わたしなんか、なにも出来なくて。とりあえず大学出て少し働いたら結婚して、って考えてたんです。でも。……それだけだと、やっぱり不安かな、って。
わたし、将来とかどうしようかな。考えなくちゃ、いけないですよね。
ああ、愚痴どころか人生相談になっちゃった! ごめんなさい!
考えることができるのなら、どうにかなる、んですか?
……なんかすごく説得力、ありますね。うん、ちょっとずつでも考えてみます。
よおし、まずは海かな! ヒロく~ん、いっしょに海に入ろうよ!
*
……あの、なんか思いっきり胸揉まれてたけど、大丈夫、ですか?
はい、中学生です。結城先生に家庭教師してもらってます。
いえ、母の別荘なので、僕にお礼を言われても。
そうですね、ちょっと離れているけど、でも同じ海岸線沿いで。
前は毎年来ていたんですけど、……僕が行きたくないって言ってたから。
結城先生から話を聞いてます。同級生なんですよね? じゃあ教育学部なんですか?
学部、って移れるんですか?
入ってから自分のやりたいことが変わったり、入る前にやりたいことが決まってない人もいる、って大学なのに? へえ、自由に決められるのは、楽しそう。
……僕も早く大学生になれたらいいのに。高校とか、めんどくさい。
部活とか興味ないし。
楽しかったんですか? テニス部?
なんかぜんぜん世界が違うって気がして。……運動苦手だし。
天文部も兼部してたんですか? 星の名前……知っているけど、見て分かるかな。
今夜。
ああ、見れる、かな? うん、見れそう! うん、見に行く!
たしか別荘に望遠鏡あった気がする! うん、行く行く!
……え。
ちょっと、あの、待って。走らないで、引っぱらないで。転ぶ、から! わ、わ、波、波が来るから! 濡れちゃう!
*
うふふ、みんな楽しそうね。
あらいいのよ、結城君。うちの別荘が近くて良かったわ。
おじいさまの持ち物でね、私も小さいころからこの辺りに来ていたの。
うふふ、もしかしたら結城君にも会っていたかもしれないわね。
私、ずっとこのところ働きづめだったから、良い気分転換よ。
別荘も使わないと荒れてしまうの。いろいろ手伝ってもらってこちらこそ助かったわ。
夜ご飯はどうするの? バーベキューでよければ、昔から出入りしている方に頼んで用意してもらうけど。ふふ、分かったわ、じゃあ頼んでおくわね。
ああ、お金は大丈夫よ、このくらいなら私のポケットマネーだわ。あら、学生さんは甘えていいのよ? せっかく全部出してあげるって言ってるのだから。
ふふふ、分かったわ。じゃあ、あとで頂くわね。別荘の使うお礼の代金なんて、それはいらないわ。食費だけでいいわよ。
しっかりしているのね、結城君。
ねえ結城君、お礼は別にお金じゃなくても、いいのよ?
……別荘では私、部屋に一人でいるの。鍵は開いているから、今夜、どう?
あら、結城君のお腹、けっこうしまっているじゃない。腿も……
ふふふ、その気になったらいらっしゃい。待っているわ。
あの子、海に入ってる。
……あの子があんなに楽しそうにしているの、しばらく見なかった気がするわ。あのポニーテールのお嬢さんが面倒見てくれているのね。結城君と似てしっかりしていそうだわ。これからどんな素敵な女性になるのかしら。楽しみだわ。
そうなのよ、もう若い人たちのこれからを楽しみにしてしまうのよね。子供を持つと、そうなるのかもしれないわ。
……ねえ、結城君、もしかしてあの中に気になっている女の子、いるのかしら?
ふふふ、いったいどの子かしらね?
*
あ、結城君、どうしよう、そろそろ戻ろっか。
夜ご飯支度する前に、みんなお風呂に入りたいよね? うん? ああ、やっぱり日に焼けちゃった。日焼け止め、塗ってたんだけどね。
うん、すごく楽しかった!
……副部長さんにはちょくちょくセクハラされたけど。
初めて会う人ばっかりだったけど、みんないい人たちだし、海に来るのも久しぶりだし、楽しかった!
え、夜?
そうそう、夜、星を見に行こうって話をしていて。あ、結城君も行く?
っていうか、みんなで行こうか!
花火? 結城君、持ってきてくれたの? わあ、すごく嬉しい!
ああ、あのいろいろ入っているやつね! あれ私も好き! 二、三本一緒に持って火をつけて……
はいはい、一本ずつやります!
うん、明日の夜、しよう!
……あの、じゃあ今日は一回、別荘に戻ろう?
実はさっき副部長さんに胸、揉まれた時に水着の隙間に砂が入っちゃって。シャワー浴びたいなって。うん。なんか紐も捻じれている気がするんだけど大丈夫か、な……
わあっ!
結城君、後ろ、後ろ向いてて! こっち見ないで! 紐、紐が解けちゃった!
*
玉子にアナゴにエビにイクラ、あなたが好きなお寿司はなぁに?
決戦、回転寿司! 葛西 秋 @gonnozui0123
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