最終話 真相、そして
「何って、茶碗蒸しだけど」
「へ?」
妹の返事に、バカみたいに気の抜けた声が出た。確かにプリンなのにしょっぱくて、予想外の味に驚いた。
「でも、食べたら視界が暗くなったぞ」
「熱中症かなんかじゃない? 外、三十度超えてるらしいよ」
そういえば暑くて家に着く頃には頭がぼうっとしていた。今は視界も戻っている。翔はそっと立ち上がった。
食べかけの茶碗蒸しを改めて食べてみる。甘い香りは合っていないが、だしの効いた美味しい茶碗蒸しだった。
何かを盛られたのではないと安堵の表情を見せる兄に、結菜が詰め寄った。
「お兄ちゃん、これに懲りたらもうやめにしてくれる? くだらない嫌がらせ」
「元はと言えばお前が!」
「お兄ちゃんから始まったことだよ。私言ったよね? 他所でやれって。漫画がバズったのは予想外だし、多少は悪かったと思うけど、もう限界。お兄ちゃんの思考回路なんて単純だし、先回りすることも応戦する事もできるよ私。続編を描くこともできる。どうする?」
それだけは勘弁だった。妹に捲し立てられ、たじろぐ兄。
「も、もうこの話は終わりだ!」
階段を駆け上り、自室へ駆け込む翔。
その背中を視線で追い、結菜は勝利を確信し笑みを浮かべた。
(くそ、くそ、くそ!)
ベッドにうつ伏せになり、半べその兄は布団に向かって叫び復讐を誓うが。
「「いつか、絶対復讐してやる!」とか、思ってるんだろうなあ」
その決意も、妹に完全にバレているのだった。
——ふたりの戦いはまだ、始まったばかり。
プリン事変〜雨宮兄妹の仁義なき戦い〜 松浦どれみ @doremi-m
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