第15話「命令と依頼」

【注意】

 今回のお話は割と不謹慎なネタしかありません。ご注意ください。久しぶりの更新なのにね……。



 大変ご無沙汰しております。

 シンドーです。

 夏に急遽新しい職場が決まり、引越ししたり仕事を覚えたりとエッセイのタイトルに違わぬバタバタっぷりでした。


 なぜ唐突に執筆を再開したかというと、今日の授業で『命令形』を教えて、とあるエピソードを思い出したため。

 命令形というのは動詞の活用で、意味はそのまま命令する表現。「食べろ」「行け」「見ろ」「来い」ナドナド。

 これを教えるとクラスの中で高確率で出てくるワードが「死ね!」

 お調子者の学生が多ければ彼ら同士で言い合うなんて、まあよくある光景で「死ね」「帰れ」「立て」「行け」など笑いながら命令し合うそれはそれは大層カオスな空間を微笑ましく見守るのも私のお仕事。新しく学んだ表現を、(一応)相手を選んで言い合うのだからまあ止めなくてもいいだろうというのが私のスタンス。

 決して止めるのが面倒なわけではない。


 ところでこの命令形というのは『みんなの日本語 初級』の第33課で勉強するわけだがこれ以外にも不穏な言い回しを言い合って遊ぶ場面を目にすることがある。

 それが第14課で『て形』という活用を教えたとき。て形の動詞は例えば「食べて」「飲んで」「書いて」「来て」「して」など。これだけで教えても、いつ使う表現なのか理解できるはずがない。

 これらは「〜てください」の形で使うということも一緒に教えなければならない。「見てください」「書いてください」「勉強してください」など。

 もうお気づきの方もいるかもしれないが、友達に「死んでください」などと依頼する学生が現れることもある。絶対ではないけど。


 以前教えていたクラスでユーモアのあるなかなかに面白い学生がいた。その学生は、まあものの見事に「死んでください」「死ね!」を両方ともクラスメイトに言い放つ光景を目の当たりにした。

 ちなみに、学生同士かなり仲が良かったので言われた側も笑って『お前はまたか』というようなことを英語で言い返していたので殺伐とした雰囲気になることはなかったことも付け加えておく。

 さてこのおもしろ学生、ひとしきり笑ったあとで何かに気づいた様子で"Sensei! I have a question!"と手を挙げる。


「私はアニメで『死ねぇ!』を聞きました。『死ね』means "You must die!" and 『死んでください』 means "Please die" is it OK?」


 急に冷静に分析すんなよ!

 そうだけどさ。

 あと、少し前に一時帰国して奥さんの出産に立ち会い、父親になって日本に戻ってきたのに『死ね』って言いすぎだぞ、お前!


 今日の授業では、そんなことを考えながら過ごしたあのクラスを思い出しましたとさ。

 基本的にはいいやつなのだが、笑いのポイントが小学生レベルの学生だったなぁ。

 頭はかなり良かったけど。

 今日の留学生のクラスでこの話を披露したらかなりウケたし、日本語教師養成講座で受講者さんに話しても高頻度で笑いを取れるので、あのときの学生には感謝している。


 そんな出来事があったので4か月ぶりにエッセイを書こうと思った次第です。

 次回更新は未定ですが、こんな感じでネタが浮かんだら書くことにしようと思います。

 タイにいた頃のネタも時間があるときに書き溜めて投稿したいけど、そう上手くはいかないだろうなぁ。

 ではまた次回。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日本語教師バタバタ噺 シンドー・ケンイチ @Shindo-Kenichi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ