吹き抜ける涼風が空を駆ける者たちの背を押す…。心地よい旅立ちの物語!

 ここは鳥人機と呼ばれる、機械の翼を持った人々と人間が共存する世界。そんな世界の、とある荒野から物語は始まる。
 トレジャー・ハンターの鳥機人の少女と、片翼の青年。そして、因縁の相手となる、同じく鳥機人の男。3人が相まみえたとき、青年の“恩人”を救い出す物語が始まる──。



 三人称で進む物語は非常にテンポよく進み、読みやすい。ある種の疾走感すら感じられる文章が、本作最大の魅力と言える戦闘シーンを際立たせている印象です。

 鳥がモチーフの世界観ということもあって、戦場は空中になります。翼や推進機構を用いて空を駆け回る彼らの戦闘は迫力があり、風を切るようなスピード感をひしひしと感じることができます。それと読みやすい地の文が合わさることで、気迫とともに清涼感にも似たスッキリとした読み応えを与えてくれます。

 キャラクターたちも魅力的。特に主人公の1人である鳥機人の少女が程よく“抜けて”いて、日常描写はもちろん、戦闘にも絶妙な“軽さ”を与えてくれる。それが作品全体の空気感と相まって、上述の涼やかな疾走感を生んでいる印象でした。
 そんな彼女が想いを胸に奮起する…。グッとくること間違いなしです。

 他方、片翼の青年の方には重く暗い過去があるのですが、その描写の加減も私にとっては完璧でした。テンポを損ねることなく描かれるその様が、終始空中を行く物語の中で地に足をつける場面になり、結果、より“空”を意識するアクセントになっている印象でした。



 物語全体に吹く涼やかな風を感じながら驚くほどの読みやすさと、迫力ある戦闘シーン。地に足のついた世界観で描かれる2人(2機?)の旅立ちの物語。サイバーな世界観が好きな人だけでなく、どんな人でも楽しむことができる本作。文句なしにオススメです!

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