鋼鉄の片翼
宮草はつか
第01話 片翼
荒野の中を、人の形をしたなにかが歩いていく。
薄汚れたマントを羽織っていて、フードを目深にかぶり、破れた裾が風に翻る。背にはなにかを背負っているかのように、マントの膨らんでいる部分があった。
ザッ、ザッ、ザッ、……。
風と足音だけが鳴っていた荒野で、不意に足音が止まった。
上空から、いくつもの黒い点が飛んでくる。それらはあっという間に近づいてきて、人の形をしたなにかを取り囲んだ。その数、三十体。
「
一体が無機質な声をあげた。
それらは全身が黒く、体は人の姿をしているが、頭の半分は鳥のくちばしのような形をしていた。大きなくちばしの付け根に一対の目があり、赤い光が灯っている。背中からは黒い翼が生えていた。
黒い集団は半分が地上に足をつけ、もう半分は上空を飛びながら、人の形をしたなにかを囲み、じりじりと距離を詰めていく。全方向から黒い集団が迫り、逃げ場はない。
「……ちっ」
人の形をしたなにかが舌打ちを零し、フード付きマントの襟をつかむ。勢いよくマントを脱ぎ捨てると、その姿が日の光に照らされた。
外見は細身の体をした若者だった。切れ長の目に、橙色の瞳が鋭い眼光を放っている。腰に付くほどの長髪が襟足で結ばれており、風に揺れる。
一見すれば、それは人となんら変わらない姿をしていた。けれども、背中から鋼鉄の翼が生えていた。
人の姿をし、鳥に似た翼を生やし、機械の体を持つ生命体である。
鳥機人の翼は腹面が白く、背面が青灰色をしている。ただ、左の翼は付け根から失われていて、右の翼しか生えていない。片翼の鳥機人だった。
「
地上にいた一体が飛び出し、片翼の鳥機人にめがけて襲いかかる。
片翼の鳥機人は身をわずかに屈めて、両手を構える。五本指の先がそれぞれ開き、中から鋭利な鉤爪が突出した。
つかみかかろうと伸ばす手を避け、片翼の鳥機人は距離を詰める。鉤爪の付いた右手を軽く引き、戸惑うことなく首もとにある青く光るコアに向かって突き刺す。
コアを体ごと貫いた右手が、背中から突き出た。
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