【藁人形の想いと霊感少女の願い】
七海いのり
xxx犯人は誰だ
この物語はフィクションです。
薄暗い部屋でキーボードを叩く音が響く。彼の名前は
淀川は中学校で
そう、彼は自分を苦しめた人物達に復讐するための計画を
淀川は母子家庭だ。父は四ヶ月前に他界していないが三階建ての家を作り一階ではパン屋を経営していた。二階は喫茶店になっていた。父は父の両親と兄弟と自営業に
淀川は家族に囲まれ家では楽しく暮らしていた。しかし三ヶ月前に経営が急に傾いた。
赤字が増えて家のローンが払えなくなる寸前に父は自殺した。自分に多額の生命保険をかけていた。父は自殺とバレないように
その際にパン屋も喫茶店も畳んだ。父の両親や兄弟は『父』が死んだことで心を痛め自営業をすることを恐れた。
せっかく苦労して建てた家だったが維持費もかかり母の手には余った。家を売却して引っ越す
淀川透は思った。自分から幸せを奪ったアイツらを絶対に
【
藁人形と結婚することで淀川には不思議な力が宿る。【サイコキネシス】を使えるようになった。念力とも言われるし【ネメシスのご加護】とも呼ばれる。
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長い黒髪に
小百合の霊力が年々増加しているのだ。清い行いを重ねる度に小宮小百合の魂レベルが上がる。一部の生き物から【
相方の名前は
涼太は時々ふらりといなくなる。そんな時に帰ってくると【依頼】を持ってくる。今回の依頼は滝川南中学校での【連続自殺事件】だった。小百合は新幹線に乗り九州から本州へと渡った。
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都市の東西南北にある県立中学校。その南の位置にあるのが滝川南中学校。全校生徒三百人弱一学年八十人程で各学年三クラスある。問題があったクラスは【二年生のAクラス】で成績優秀者が集うクラス。
今年の梅雨時期に淀川透が不登校になる。夏休み明けから【淀川透】が登校を再開してから【連続自殺事件】が起き始めた。クラス全員が淀川透が犯人だと言っていた。しかし殺害の
依頼主は一年生の【
亜弓が真実を知った際に『秋人への愛』を残していては復讐に走ってしまう可能性がある。生き霊として世界を不幸にするかもしれない。だから
【二年生のAクラス】には普通の人間には見えることも感じることも出来ない【
【
小百合と涼太は相談する。淀川を成敗するのは簡単なことだ。しかしそれでは【負の連鎖】を絶ち切ることは出来ない。【
【
小百合と涼太は『淀川透』の浄化をするべく聞き込み調査を始めた。
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あれから三日が過ぎた。小百合と涼太は淀川の家にやってきた。時間は深夜二時。最も霊的なナニカの力が増す時間だ。淀川が【ナニカ】とコンタクトを取るなら恐らくこの時間に違いない。
小百合は『鍵の妖精』に協力をしてもらい、音を立てずに玄関の鍵を開け侵入する。一度敵の懐に入り込めば後は糸を辿るだけ。霊気の糸が一番強いものを選んで進めばその先に【ナニカ】がいる。
意を決して小百合が淀川の部屋に入る!
そこには
真っ白な灰のように
中学二年生の淀川が目の前でしわしわのお
小百合が動く! 藁人形と淀川透との【
消えそうな命の
しかし! 涼太が女郎蜘蛛の糸に捕まる! 小百合は自分の額から大量の御札を取り出しそれを
御札で強化された刀で
すると黒いキジ猫の涼太は浄化され元気を取り戻す! 勾玉も真珠も真っ黒に変わり果て
予想外に女郎蜘蛛が強い! 小百合は刀で薙ぎながら女郎蜘蛛に迫る! 蜘蛛の足は八本ある。しかし女郎蜘蛛には人の形をした腕が左右に二本ずつついている! 手が二本しかない小百合が手足が十二本ある巨大な蜘蛛と戦うのは無理がある!
とその時! 助太刀に現る影!
それは人型になった涼太だ!
涼太は
涼太が塔婆を
畳み掛けるように小百合が宙を舞う! 女郎蜘蛛の頭上から真っ逆さまに刀を振り下ろす! 女郎蜘蛛は真っ二つになる! 斬り口から火の手が上がる! 女郎蜘蛛が燃え盛る!
涼太は火の粉が他を焼かないように風と水の結界を張る! その隙に小百合は淀川に近付き【縁で結ばれた藁人形】を清めようとする!
しかし突如として状態は変わる!
淀川の血肉が急に
小百合と涼太は顔面蒼白しながら追いかける! このままではさらなる悲劇が生まれる! 一刻も早く浄化しなければならない!
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霊力を使って藁人形の溶けたゾンビの足跡を
どうして亜弓の左手に【藁人形】があるのか。それはきっと淀川透と似たような経緯だろう。亜弓も大好きな兄の敵を討ちをしたくて、
【藁人形の
小百合は怒り狂った。
小百合の長い黒髪と漆黒の目が一気に真っ赤に染まる! まるで火山が噴火するかのように小百合の霊力が爆発する!
小百合は御札で出来た刀を消す。左右それぞれの掌に真っ赤な勾玉を生み出す。そして
淀川透は消えた。相原亜弓はそのまま気を失う。丁度良いので亜弓の頭に触れて報酬である『相原秋人との思い出』を抜き取る。亜弓は実の兄の存在を忘れてしまう。でも仕方ない。今の亜弓の心はまだ幼過ぎて【罪の重さ】を抱えきれない。また呪詛に躍らされる心配がある。だから記憶を奪うことでしか亜弓を救えないのだ。
小百合は一言だけ残す。『ごめんね』と。
小百合は涼太を見る。涼太は
小百合の髪と瞳はまだ赤いままだ。小百合は個室のパソコンを操る。涼太は側で小百合を見守る。暫く調べていると欲しい情報にヒットする。パソコン画面に映し出されたのは【あなたの怨みを成就させます。奇跡の藁人形】と書かれた闇サイトだった。
小百合は涼太の右手を自分の左手で強く握る。小百合の右手はそっとパソコン画面に触れる。小百合が緊張した面持ちで『行くよ』と涼太に声をかける。涼太は悲しい声で『姉ちゃん、行こう』と返した。
小百合はパソコンを通して【藁人形を作った犯人】のパソコンへと空間移動をした。『時の精霊』と『光の精霊』と『電子の妖精』の力を借りて出来たことだ。
そのパソコンは見慣れたものだった。
着いた場所は【小宮小百合】の部屋でそのパソコンは【小宮涼太専用】のパソコンだった。小百合のパソコンはデスクトップだが涼太はノートだ。
涼太はたまにノートパソコンを持ち出すことがあった。小百合は涼太もお年頃の男子だから……なんて思っていたのだが。
小百合は【これは涼太の
小百合は苦笑する。『なんか失敗しちゃった。ごめんね』と涼太に言った。
涼太は涙を流した。
それから『姉ちゃん、最初から気付いてたよね。もう僕を
小百合は顔をぐしゃぐしゃにした。『姉ちゃんが嫌いになったの? 私の悪いとこを直すから、だからお願い! また仲良くして?』と言いながら涼太の両手を掴む。
涼太はそっと握り返す。小百合を見詰めながら言葉を紡いだ。『僕は【生き霊】なんだ。神様に近い存在の姉ちゃんの側にはいられないんだよ。僕はもう限界なんだ。姉ちゃんの眩しい光に灼き尽くされそうで毎日脅えているんだ』そう零した涼太の両手は震えていた。
小百合が何か
『僕は姉ちゃんが猫神様に近付く度に凄く嬉しかった。姉ちゃんが神様みたいになるのが僕の夢だった。ずっと側で姉ちゃんを支えたかった。だけど僕はただの生き霊だった。今の僕はもう【
涼太は涙で滲んだ顔で精一杯に微笑んだ。
『嫌だ。嫌だ、嫌だ、嫌だ。……嫌だ、嫌だ!!!』と小百合が叫ぶ! 大粒の涙が
『姉ちゃん、お願いだ。今やらなきゃ……僕が姉ちゃんを殺してしまうんだ。神様みたいに霊力が高い姉ちゃんが僕の中の【憎悪】に気付かないはずがないよ。もう見ないふりは出来ないんだ。僕はもう逃げないから。姉ちゃん、僕を救ってよ。僕の良心が僅かに残っているうちに消してくれよ! 僕は怨霊になって姉ちゃんを不幸にしたくないんだ!!!』
涼太が怒鳴る!
涼太は黒いキジ猫の姿に戻る! それから丸腰のままで小百合に体当たりをした!
小百合は何度も『止めて!』と叫ぶ!
しかし涼太は全力で何度も小百合にぶつかってくる! 小百合が避ければ黒いキジ猫の涼太はそのまま壁に激突した!
何度も何度も頭突きをしてくる涼太の身体はぼろぼろになった。速度も威力も無くなった涼太がふらふらと小百合に体当たりをした。それを小百合は避けない。
涼太の口から血が溢れる。目は半分閉じて開かない。涼太は苦しみながら小百合に攻撃を続ける。
小百合は涼太を治療しようと思った。黒いキジ猫の小さな涼太に手を伸ばそうとすると鋭い爪で斬りつけられた。小百合の左右の腕から血が滴る。
涼太は小百合の新鮮な血の匂いを
『こ、ロシ、て、ねえ……チャン』と懇願してくる! 涼太の身体が
涼太が壊れていく……。
小百合は涼太との
胸の中には涼太と過ごした時間がいっぱい詰まっている! 胸が張り裂けそうだ!
『涼太、涼太、涼太……涼太! 涼太!!!』
小百合は泣き叫びながら額から大量の御札を出し二本の刀に変える!
――――――――そして、
小百合は涼太の胸を十字に斬り裂く!!!
涼太は怨霊になる前に死んだ。
涼太は幸せそうに笑った。
『姉、ちゃん……ありがと、う』と小さな声を
小百合は涼太の魂を抱きしめて、絶対に生き抜こうと胸に刻み込んだ。
xxx終
【藁人形の想いと霊感少女の願い】 七海いのり @kuma20
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