10話 弟子より欲しい物

僕は実家で決意を天国にいる妹たち話した後自室に戻った。ひとりぼっちの部屋が僕の心をさらに蝕んでいく。しばらくして僕は終局まで妹と最期に指した一局と同一局になった今日の棋譜読み上げ天を見上げてからベッドに沈んだ。わずかに昨日泊まった唯と千聖の香りが鼻腔をくすぐる。大好きだった妹の香りと重なる。僕はわずかな残り香を堪能していた。


僕はかなりのシスコンで妹たちもかなりのブラコンだった。妹たちに支えられていたから僕の今があると言ってもいい。

その支えがなくなった今僕の将棋はとにかくひどいものになっている。いいときも悪いときも妹たちが指しそうな手を指す。その結果逆転負けやさらに形勢を損ねた場合も数え切れない。

また妹たちと研究会をする日は呼鈴を待っていたり、妹たちの好きなものを見つけるとつい買ってしまう。それぐらい妹たちが大好きだった。


唯たちは妹たちと重なる点がたくさんある。

1つ目は名前。漢字は違うけど読み方は同じだ。2つ目は笑い方。ゆいたちは妹たちと同じで美くて可愛らしい笑顔だ。この笑顔を見ると僕は温かい気持ちになり安心する。

3つ目は将来の夢。唯たちは妹たちと同じで女流棋士になりたいらしい。僕の妹たちはあと一歩届かなかった夢。唯たちには叶えてあげたい。このとき僕は…。4つ目は容姿。唯は少し幼い感じが千里ちさとに似ていて、クールな千聖ちさとゆいに似ている。

僕はそんな妹たちに似ている唯たちの願いを叶えてあげたい。だから僕の内弟子にしたい。僕は支えてくれる家族のような存在が欲しかった。

「唯たちが妹だったらいいのに」

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君の笑顔に魅せられて… 二葉弥生 @siken

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