第81話 ヤンキードラゴン

 無事に冒険者ギルドにて薬草とゴブリンの耳を買い取ってもらい、大銀貨5枚と銀貨2枚を手に入れた僕とブランカ。ゴブリンを3パーティ、15体狩って大銀貨5枚。ゴブリン1体で銀貨1枚らしい。薬草を袋いっぱいに詰めて銀貨1枚だったことを考えると、ゴブリンを狩った方が早く儲けも大きい。これからは薬草の採取ではなく狩猟に力を入れるべきかもしれない。後でブランカと話し合ってみよう。


「今日は何を食べようかしら」

『ゴブリン初討伐の記念日でもあるからね。豪勢にいこう』


 そんなことを言いながら、もう用は済んだので、冒険者ギルドを去ろうとすると、3人組の男たちが僕たちの行く手を阻んだ。派手な格好をした荒々しい雰囲気の男たちだ。


「待ちな、嬢ちゃん」


 避けて通ろうとすると回り込まれてしまった。どうやら僕たちに用があるらしい。


「あ!あいつら」

「あいつらに目を付けられたのかよ……可哀想に」

「お前、助けてやれよ」

「なんで俺が白のを助けなきゃいけないんだよ」


 なんかまともな用じゃなさそうだな……。カツアゲとかだろうか?


「話は簡単だ。そのドラゴンをオレたちに寄こせ」


 男たちの狙いは、どうやら僕らしい。


「なーに、心配すんなって。バラしゃしねぇ。オレたちが荷物持ちとして使ってやるよ」

「まあ、あんまり使えないようならバラして売っちまうけどな!ハハ!」

「おいおい、今言ったらブルッちまうだろ」

「ハハ!そうだな。わりぃわりぃ」


 なんだろう。とても新鮮な気分だ。思えば、転生してからのこの100年間、僕にここまで無礼な態度をとる者は居なかった。この街に来てからも、僕を珍しがったり怖がる声はあっても、ここまで侮辱されたことはなかった。ブランカが侮辱された時は怒りが沸いたけど、僕は自身が侮辱されると不思議と怒りは沸かないらしい。ただ、相手の見る目の無さを可哀想に思うだけだ。


「マジブルッてんじゃん。てか、よく見たらこの槍マジ良くね?ぱねぇんだけど!」

「そうだな。その槍も貰ってやるか」


 さっきからこの男たちは何様なんだろうね?すごい上から目線だ。こんな男たちが怖いのか、ブランカが微かに震えていた。このまま男たちに付き合うのも面倒だし、そろそろご退場願おうかな。


「てか、この女意外と面良くね?」


 男の言葉にブランカがビクリと震えて俯く。


 男の言う通り、ブランカは顔が良い。ブランカは飢えから解放され、食事も少しずつしっかり摂っているおかげで、コケていた頬もハリが出てきて、胸も少し大きくなった。ブランカは本来の美少女っぷりを取り戻しつつある。


「そういや白い悪女は傾国の美女って話だっけか」

「オレたちで奴隷として使ってやろうぜ」

「そうするか。おら、こっち来い」


 中央の男がブランカに手を伸ばす


 ここまでだな。


 男の手が不自然に止まった。


「な、なんだ!?」

「体が…!?」

「動かないんですけどー!?」


 男たちが騒ぐのを無視して僕はブランカに声をかける。


『もう行こうか』

「え?ルー……」


 ブランカは僕が思っていたより男たちに怯えていたのかもしれない。僕が声をかけると、安心したように体の力を抜いて、ふにゃっと笑顔を浮かべた。


「てめぇコラ!何しやがった!?」

「クソッ!クソッ!」

「動け!クソが!」


 男たちが見苦しく足掻いているが、体はピクリとも動かない。


「何かやったの?」


 ブランカが騒ぐ男たちを見ながら訊いてくる。


『うん。ちょっとね』


 説明が面倒なので言葉を濁しておく。


「てめぇら!ただじゃおかねぇぞ!」

「そうだ!早く解放しねぇとぶち犯すぞコラ!」

「さっさと解けコラ!泣くまで、泣いても容赦しねぇぞコラ!」


 この男たちはバカなのだろうか?なぜ今、僕に生殺与奪の権を握られていることを理解できないのだろう?汚い言葉で罵って僕の心証を悪くしてもメリットなんて無いのに……。


 僕は男たちのことが理解できず、首を傾げてしまう。


『ブランカ、彼らはバカなの?』

「え?」


 僕は、あまりにも考え無しな男たちのことが信じられなくて、ブランカに確認を取ることにした。


『彼らは今、動けないんだけど……なんで、あんなに挑発的なの?戦うどころか逃げることもできないのに。彼らはそんなことも分からないのかな?』

「え?えー…なんでだろう…?」


 ブランカも分からないのか、首を傾げてしまう。


「おいコラ女!てめぇ犯すぞコラ!」

「あぁ!てめぇ死にたいのかオラ!」

「ぜってー犯してやる。死ぬまで犯してやんぞコラ!」


 そんなブランカの態度が気に喰わないのか、男たちが一層騒ぎ出す。


 うーん……。僕の見ていないところでブランカが襲われてもダメだし、男たちには脅しをかけておこう。


 僕は男たちの首をキュッと絞めて静かにすると、ゆっくりと男たちに語りかける。


『君たちは今すぐにでも死ねるけど、死にたいのかな?』


 ようやく自分たちが死ぬ危険があることに気が付いたのか、男たちの顔が青くなる。鈍過ぎるな。


『今回は警告だ。今後、僕たちには関わらないでくれればいいよ。次は無い。意味は分かるね?』


 男たちは、必死に蒼黒くなり始めた首を縦に振るのだった。

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神龍転生~神龍に転生した僕の甘々甘やかされ生活~ くーねるでぶる(戒め) @ieis

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