第三話 死に至る毒

「では、まず一番はじめに死んだアイン。剣士の話をいたしましょう」


「なんと...アイン殿が一番最初に亡くなられたのであるか...彼はこの国随一の剣術の使い手で、強い精神力を持たれていたのだが...」


「では、王様。少し質問を致しましょう。剣士はなぜ死んだと思いますか?」


「想像がつかぬ...アイン殿が死ぬなど...」


「じゃあヒントを差し上げます。剣士は魔法が使えません」


「まさか、魔物に殺されたのでは...」


「半分正解で半分間違いです。彼は私が殺しました」


私は少し下を向いてこう告げる。


「なんと!?なぜ殺したのだ...」


王は驚いているようだ。

まぁ仕方のない事だろう。


「ではその話をいたしましょう」


「うむ...」


「剣士は魔法が使えません。だから最前線で戦いました。誰よりも前で戦い、そして誰よりも傷を負いました」


「私たちが旅していたところにはね、聖水なんて便利なものはありません。あんなのは人が住んでいるからあるんです。でも私たちが行く場所は?はい王様答えてください。」


「魔王の勢力範囲内だから、村は滅びておるな...」


王は静かにそう言った。


「はい。聖水があれば回復はできます。ですが、魔王が支配している地域なのでそんな便利なものはありませんでした。王様、これはなんだと思いますか?」


そう言って私は小瓶を王に見せる。


「見たこともない代物だ...一体これは...」


「これはですね、聖水の代わりです。魔物の住んでいる地域でしか生えない薬草から作った聖水擬きとでも言いましょうか。効果は聖水と同等かそれ以上あります」


「そんなものが存在するのか...それならなぜこの話を...」


「そんな都合のいい代物じゃないからです。これにはね、毒があります。一度使えば最後、1時間後に突然吐き気に襲われる。2時間後には幻覚が見えてくる。3時間後には発狂する。そして4時間後には死に至る。これを止めるにはプリーストに浄化してもらわなければなりません。」


「なら、なぜ?プリースト殿がいればなんとかなったのではないのか?」


「それがならないんです。この毒は消せない。プリーストのエミルが言うには、呪いのようなものだと。強すぎて消すことができないと言っていました。ですが、抑えることはできると言ったんです。しかし、MPを回復する手段が殆どないことが災いしました。ついにMPが尽きたんです」


「MPが尽きた...あのプリースト殿の...一体どれほどの強さなのだ...」


「その時、剣士はこう言ったんです。俺は発狂したくない。みんなを傷つけたくないんだ。だから殺してくれ。お願いだ。俺はここでもうギブアップらしい。早すぎる退場だが、お別れだ」


アインは最後の元気を振り絞って笑っていた。


「そして、狂おうとしたところで私が手を下しました。本人の願いだったんです」


「そんなことが...」


「これが剣士の最後です。どうでしたか?」


「これはあまりにも...」

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あの日魔法使いは何を望んだのか @Shiranui320

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