遺言

あんなにも重苦しかった僕の生命は

潮風に吹き飛び、容易く空を泳いだ


あの瞬間、遠くにみえた水平線は

たしかに美しい曲線を描いていて


僕がこれまで信じて生きてきた物事が

決して間違っていなかったのだと知った


涙は結局ただ塩分を孕んだ水だった

戻るべき水盆は大海であり故郷だった


白波は僕を静かに呑み込んでいく

おかげで呼吸ができるようになった


今夜から僕は月を望まずにいられる

海ならば月を迎える朝になれるから

寂しければ共に地球の裏側まで旅をする


ただいま 僕の生命は いま

あなたの元へと帰りました


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白波 伊月 杏 @izuki916

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