最終話 ピザ 

「何かユウの様子が変やねん」

 

 夕食をつつきながらビール片手の遼平に、ミカが言った。


「変って、どないに変やねん?」

「何でも自発的にするようになって、スーパーに行っても、あれ買うてこれ買うてごねんようになって、えらい賢いねん」

「賢いんやったら結構なこっちゃ、ユウも成長したんやろ。ひと月近く母親のおらん生活していたんやから」

「そうなんかなあ」

 

 ミカはまだ納得いかない様子でいた。

 あれだけ騒いでいたDNA鑑定も結局とりやめた。リョウ君が博多に帰ってしまい、鑑定をしたところで意味がないように思われたからやと言うていた。それにお金もかかるしとも。

 遼平は胸を撫で下ろしたが、リョウは俺の子ではなかったのか。それならリョウ君ママもそれらしいこと言うやろし、いや、どうなんやろ、謎は謎のままやった。


 次の日曜日、ノンちゃんに無事女の子が生まれたという報せを受け、ミカは出かけて行った。


「ユウ、お昼はピザでも取ろうか?」

「うん、ピザ、ピザ」

 

 珍しく勇気がはしゃいでいた。

 ポストに入っていたピザのチラシを片手に電話した。


「ユウ、ピザが届いたよ」

「わーい」


 勇気は言われる前に手を洗いに洗面所に行った。

 さてと、ビール、ビール。

 冷蔵庫を開けながら、ふと気がついた。


「ユウ、チーズが苦手なこと忘れていたよ、ごめん、ごめん」

 

 食卓でピザを頬張るユウがいた。


「僕、チーズ食べられるようになったんだ」


 そうか、おまえほんまにユウなんか?




  










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

💛恋はまだ始まったばかり。妻にはナイショ。 オカン🐷 @magarikado

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る