【お詫び】エスケープした競走馬たち【筆者も脱走】

 コラム主の失踪により、長らく休載となってなっておりました本コラム。


 ですがこの度、コラム主が地下労働場にて苦役に就いているところを本誌編集部が発見・救出する事に成功致しました。


 つきましては編集部が肩代わりした債務返済の為にコラム主も本日より連載を再開する運びとなります。

 なお今回の一件で反省したのか、当人も今後しばらくは逃亡する気配を見せておりません。


 そんな筆者に愛想をつかすこと無く、どうか、ご愛顧を賜りたくお願い申し上げます。


編集部一同


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 ―――さて、読者諸賢にまず知って頂きたい事がある。

 それは逃げ出す事の快感だ。


 自らの為すべき事からの逃避行。その甘美な誘惑には抗い難いものがある。

 そしてそれは、我々人間ばかりでは無く、競走馬にとっても同じことなのだろう。


 という訳で今回は競馬場から脱走した馬達について話したいと思う。


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 特にインパクトがあるのは当時6歳だった、牝馬のサルダーナ号だろう。

 南関大井競馬に所属する彼女。6月も下旬に入り少し暑かったのだろうか、調教中に突如逃げ出し何と厩舎に隣接して流れている京浜運河に防潮堤を飛び越えダイブ。およそ20分間の水泳を楽しんだ。


 どうやら陸地を走るだけでなく、水泳の才能にも恵まれていたらしい彼女。幸いにも水難事故は免れたものの、当然の如く競馬場は管理責任を問われる事になる。


 が、当の彼女にはそんな事は些末な事でしかなかったようだ。

 成績はいまいち振るわなかったが、その持ち前の奔放さで多くのファンを獲得した彼女。

 彼女はその後9歳まで、何と71戦も戦い続ける。


 奔放なだけでなく、旺盛な戦意も持ち合わせた恐るべき名牝だったと言えるだろう。


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 とはいえだ、競走馬が余りにも脱走を企てる環境というのも問題だろう。


 数ある日本の競馬場の内でも、特に競走馬の脱走が多い競馬場がある。

 岐阜県の笠松競馬場である。


 ここでは昨年の6月から何と5件の競走馬が、敷地外などに脱走した。


 以前、笠松競馬場では逃げ出した競走馬と一般車両が衝突し、運転していた男性が亡くなる事態にまでなっている。


 当たり前だが、やはり馬が脱走するのは危険なのだ。

 人にとっても馬にとっても。


 脱走が起きる根本的な原因として馬を移動させる時、一度敷地外に出さなければならないという問題がある。

 運営に広大な敷地を必要とする競馬とは切っても切れない問題で、あちこちの競馬場でも同様の問題を抱えたところは多い。


 この笠松競馬場の場合もレースを行うコースと、普段馬が暮らす厩舎が分散してお、この間の移動……これが安全な作業のネックとなっているのだ。


 もっともこれは当事者も良く理解しており、今年は特別予算を組み馬道の改良や馬運車の導入などに取り組むとしている。


 その対策の成果が出て、競走馬達がより安全な環境でレースに励める様になることを、一競馬ファンとして切に願うばかりだ。

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