令和最先端のゴシックホラー

現実的にも精神的にも、薄暗くジメジメとした空間。
そのの中で起こる怪奇現象。

人の心が幻覚や妄想を生み出すことで生まれる、現実と幻想の境目が分からなくなることに苛まれる怪奇小説は、これまで多くの名作を生んだ。

この作品の1話目冒頭を呼んだ時、どこか幻想的な残虐表現は江戸川乱歩のようだと思った。
そして怪奇小説の歴史は、ただ狂気にのまれる姿を描くものから発展して、幻想の中で推理を求めるものとなる。
現実と狂気が混在する名作は「ドグラ・マグラ」が有名だが、あれもまた推理小説の一つと分類されることもある。

この作品はまさにその、近代作家たちによる日本的な狂気を推理する物語と、西洋のゴシックホラー(幻想文学)のようなアイデア、それを令和のネット小説的な読みやすさやキャラたちで包んでいる。
加えてキャラの持つ特徴はラノベのような能力だが、それらが渋滞せずに一つの物語のうねりを生み出しているのは、作者のセンスに他ならない。

この幻想的な雰囲気の中で繰り広げられるゴシックホラーとクセの強いバディたちの推理劇、一章ごとの区切りが多いように見えるが、実際読んでみるとさらりと最後まで読めるので、エドガー・アラン・ポーを始めとする近代ホラーやサスペンスが好きな方にはおすすめです。

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