だれにも言えない恋(恋愛)

影神

古典恋愛



「ほらー?


静かにぃ。」



僕の初恋。


その相手は、、


「じゃあ。


前回の続きから、、」



"先生だった"



高校2年に上がり。


後1年で卒業となってしまう。



先生の担当は古典。



僕は、古典は大嫌いだ。


何を言っているのか分からないし。


その他の教科の重要性も理解出来ない。



いや、、


理解は、しているつもりだ。



、、今日は髪を縛っている。



綺麗に束ねられた髪。



黒板に書いている時。


僕は、黒板の文字ではなく。


先生の後ろ姿を見ている。



少し肩幅があり。


背は普通ぐらい。



好きな色は赤だと思う、、



そんな事を日々考えながらじゃ。


授業の内容なんて全然入ってこないけど。


先生の黒板に書く文字だけは、


愛おしく感じていた。



「それで、、ここを。。」


ふと顔が合いそうになり、


不自然に目を逸らす。



当てられても分からない。


分かりはしない。



勉強してみた事も。


無かった訳じゃない。



「あー、



わかんねー。。」



ただでさえ。


日本語が上手に使えてないのに。


こんな事を勉強している時間なんて無い。



日本人だからこそ。


きちんとした言葉やきちんとした使い方を。


改めて学ぶ必要があるだろう!!



手は止まり。


机には気付けば漫画が積まれていた。



日付と連動する様に。


出席番号と紐付けられた固有名詞は、


その日に限って代名詞の力を発揮する。


「すいません。


分かりません、、」



唯一会話する事が出来た対話は。


謝罪と、否定だった。



「はあぁ、、」


教室のベランダで風に当たりながら深い溜め息を漏らす。


「また、古典か??」


「ちょっ、、!



声がデカイよ!?」


「んなあ、大丈夫だよ。



お前が、あれを見る目は、


正真正銘恋する瞳だって。」



彼は1年の時から一緒の友達だ。


何で仲良くなったのかは、


今となってはあやふやだが。


いつもこうして気に掛けてくれていた。



友達「コクっちゃえよ??」


「んな。出来るわけ、、」


友達「噂をすれば。。」



校庭には先生が居た。



「あー。


可愛いなあ。」


友達「お前ってさあ??


もしかして歳上専門??」


「、、同年代の若いのに。


発情出来る所が、僕には分からないよ。」


友達「まあな?


それじゃ、あれか?


叶わない恋に萌えるタイプか??」


「何だね。


君は未来から来たのかね??」


友達「フハハハハ!!



何故分かった??


分かってしまったか、、



私から滲み出るオーラに!!


君は、何かを!感じたかね??」


「僕の未来は??



結婚相手は??」


友達「フハハハハ!



知ってしまったらつまらないじゃないか。


そうゆうものは、自分で切り開くものさ!!」



周りからの冷たい視線を感じながら。


2人だけの世界に浸れる関係も悪くはない。



「やっぱり無理かな、、?」



湯船に深く沈む。


心臓の音は耳を伝って鼓動する。



『学生の本分は、勉強にあらず』



「よし!!



ゲームでもするか!!?」



気合いを入れ。


ベッドへと潜り込む。



明日はテスト。


追い込みをかける様に、


残量を知らせる画面の表示に。


充電器をぶっ指す。



「あぁあ、、」


紙をめくる音が耳障りだ。



見たって何も分からない。


だって。



勉強していないんだもん、、



「、、バイトでも。やるかな??」



短い青春。


僕が先生に寄せていた好意は。


恋愛感情によるものだったのか。



それとも、、



誰にも言えない様な事。


思春期にありがちな、


生物的なものだったのだろうか。



僕が唯一墓場まで持っていく秘密。



誰しもが。


生きていればひとつぐらい、抱えているのだろうか。



あれから、、


結局僕は想いも伝えられずに。


高校を卒業して、大学生になった。



大学生になっても。


僕の目の前から彼女が消える事等無く。


瞼の裏の残像に。


ずっと恋をしていた。



友達「まだ好きなのか??」


「あぁ。」


友達「ストーカーとかはやめてくれよ?」


「んな訳。」


友達「案外。


適当に付き合ったら忘れられたりして。」


「それな??」



付き合う話しが無かった訳じゃない。


そうゆう機会もあった。



だけど。


僕の心は"彼女"で満たされていた。



バイトも。その後の時間も。


友達とは離れる事は無く。



そのまま流される様にして。


同じ会社で社会人となった。



想い続けて。


あれから何年経っただろう。。



「先生??」



それは、運命かの様に。


再び、僕へと機会が訪れた。



先生「あらぁ。」


「先生!!



僕、、」



何やかんやあり。


僕の想いは実を結んだ。



友達「なんやかんやって何だよ?


そこが一番大切なんじゃねえのか??」


「まあ。


良いじゃねえか。」


友達「そうだな??」



『あははは』



あの時。後ろ姿を見つめるだけだった存在は。


今。僕の手を握って微笑んでくれている。



不意に思い出したあの時感じた想いは。


今では形を変え。



感謝と、肯定になっていた。



教師だった彼女が。


僕を気にしていてくれたという事を。


一体。誰に言えるだろうか、、



まあ。彼女が気を遣って。


僕にそう言ってくれただけかもしれないけれど。



彼女からしてみたら。



誰にも言えない恋。



だったのかもしれない。



元先生と元生徒。


そんな漫画みたいな恋愛も。



あっても良いのかも知れない。



彼女「行こう??」


「うん。」



僕は相変わらず。


彼女の後ろ姿を、


じっと見つめるのが癖になっていた。



彼女「何見てるの??」


「バレた?」


彼女「バレバレ。



変わってないね??」



髪を束ねた姿は。


相変わらず現役で。



僕の心をくすぶった。



先輩教師「まだ付き合わないの??」


「ええ、、」


先輩教師「もしかして生徒に好きな子でもいるの??」


ブフッ、、


先輩教師「、、マジか。。



まあ。とりあえず卒業するまでは待ちなさい??」



何と言うか。


顔がタイプだった。



教師と言う立場から。


そして、大人として。



そうゆうのを出せるものでも無かった。



「はあ、、」



また冷たく当たってしまった。



彼の困った顔が。何とも言えない。


誤魔化す様に湯槽に顔を沈める。


ブクブクブク、、



「よしっ!!」



授業が分かりやすい様に。


教える内容を自分なりに分かりやすくまとめる。



「それで。


ここはこうなって。」


これなら分かるだろう、、



寝る時間を割いてまで。


分かりやすく内容をまとめ。


テストもそのまま出した。



が。。



「どうなってんだ、、」



、、赤点。


「彼は。勉強してるのだろうか、、」



「はあ。。」


深いため息と共にカレンダーを見つめる。


月日とは。無情なモノだ。



「卒業。おめでとう。」


卒業生1「先生~、、」


卒業生2「元気でね~」



期待とは裏腹に。


噂話とも裏腹に。



彼が私にナニカを伝える事は無かった。



「はああぁ、、」


先輩教師「ドンマイ?」


「好きだって聞いてたのになぁ、、」


先輩教師「若いんだから。


仕方ないわよ。



私もそんな想いしたいなあ、、」


「先輩。


馬鹿にしてるんですか??」


先輩教師「ち、違うわよ?


ちょっと。飲み過ぎじゃない??」


「今日はとことん付き合って下さい!!」



新しい生徒に。


新しい学校。



環境も変わり。


時だけが過ぎた。



たまたま寄ったコンビニで。


まさか彼と逢う事になるとは。



「先生!!」



縁。


必然。



きっと彼とは、そうゆうので。


結ばれていたのかも知れない。



相変わらず私の後ろ姿を見つめる癖がある。


前を向いている時に。


いくらでも見てくれも良いのに、、



「何言ってるんだろう、、私。」


「先輩??


今何か考えてましたかあ??」 


「いやいや。」


「えー。


教えて下さいよぉ。。」



今では私が後輩の愚痴を聞く側になっている。


後輩教師「でね~?



彼氏があ、、」



私の時もこんな感じだったのだろうか、、


後輩教師「聞いてますか??



先輩!!」



[ゴメン。


遅くなりそう。]



[大丈夫だよ。


ゆっくりしてきて。]



後輩教師「先輩?


彼氏ですか??」


「チガウ。」


後輩教師「怖。」



もう、私も若くない。


こうゆうのに誘惑されたら。


彼もよそ見してしまうのだろうか、、



後輩教師「次行きましょう先輩!!」


「勘弁してえ、、」



「ただいま、、



ふふふ。」


彼の寝顔は、あの時のまま。


幼い表情が今でも残っている。


彼「、、お帰り?」


「ただいま。」



こんな生活がいつまでも続けば良いと。


隣で寝ている彼の手を。


強く、握ってみる。



誰にも言えない恋も。


今では全然。



アリだと思う。

































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だれにも言えない恋(恋愛) 影神 @kagegami

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