第5話 ふんわり甘い
桜の季節になりました。
学校の卒業祝いに、この日は浅草のミルクホールにやってきていました。
この店の看板メニュー、
「なんで魔女さんが死ななかったかって?」
「さぁ、僕にもわからないなぁ」
三角形のスイーツを口に運びながら、壱は首をかしげ、それからにっこり。
「愛の力ってやつかもね」
珈琲を飲む手を止めて、それはなに? と魔女は訊き返します。
「魔女さんにも、わからないことがあるんだね」
壱は知っているというのでしょうか。
心外です、この子よりもずっと長生きなのに。
むっと尖らせた唇を、魔女がひらいたときでした。
フォークに刺さった珈琲味のスポンジが、口のなかへ押し込まれます。
びっくりしつつも、おとなしくシベリアを食べる魔女を、壱は頬杖をついて見つめながら、
「それはね、クリームよりも甘いものだよ」
と、蕩けるようにわらったのでした。
袴をはいた魔女とビードロを吹く青年 はーこ @haco0630
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます