ぼくVtuber
シカンタザ(AI使用)
ぼくVtuber
突然ですがぼく、Vtuberになります。イエーイ!
「……」
なんとなくスマホで検索してみると、ぼくはどうやら「バーチャルYouTuber」というジャンルの人間らしい。動画サイトでは人気のコンテンツだそうだけど、ぼくみたいな人間が人気になるなんて信じられない。だってぼく、何にも面白いこと言えないし、顔もスタイルも良くないし、性格だって暗いし、運動神経もないからスポーツだってできないし、勉強だって得意じゃない。それに……こんなにつまらない男なのに……。どうしてぼくなんかが人気になれるんだろうか?……いや、待ってよ。ひょっとしてぼくは、自分で思っているほど面白くなくてつまらなくもなくて魅力がないわけでもないのか!?
「あーあ」
ぼくは大きくため息をつく。そしてふと思った。
「あれ?……でも、ぼくってそんなに魅力的な人間なのか?」
そう思った途端、急に胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚に襲われる。……ああ、ダメだ。やっぱりぼくには魅力があるんだ。そうだよね。ぼくは別にカッコよくはないけど、だからといって醜くもない。それに顔立ちだって悪くないし、背丈だって平均的だし、体重だって普通だし、手足の長さだって標準だし、体形もスリムだと思うし、視力だって両目とも2.0あるし、肌の色も健康的な感じで、鼻筋だって通っていて、唇の形もいいと思うし、歯並びも綺麗だと思うし、眉毛も整えているし、耳たぶも大きくて可愛いし、髪質もサラサラしていて気持ちいいし、爪の形も良いし、首回りも太くないけど細くもない感じで、お腹周りはぽっこりしてるけど肥満ではないはずだし、お尻の大きさも普通ぐらいはあるだろうし、太腿だってムチッとしているけど張りがあって触ると柔らかいし、ふくらはぎは引き締まっている方かもしれないし、足首だってキュッと細い。つまり全体的にバランスが良いのだ。ぼくはもう一度大きくため息をつく。……そうだ。きっとそうなんだよ。……ぼくの魅力に気づいてくれる人が1人でもいるなら、それはそれで嬉しいことだ。その人のために頑張ろう。うん、そうしよう。
そんなこんなで初配信を始めた。
「ど、ども〜!……ぼ、ぼくですぅ〜」
なんだか緊張する。……でも、みんな優しくしてくれてるみたいだ。良かったぁ……。
「今日はですね、あの、自己紹介します」
それからぼくは、自分のプロフィールを説明した。名前や年齢や性別はもちろんのこと、趣味とか好きな食べ物とか嫌いなものとか得意なこととか苦手なこととか、とにかくいろいろ話した。……あれ?……ちょっと待って。ぼく、これじゃまるで就職の面接みたいじゃないか。ぼくは慌てて話題を変える。
「あっ、そうだ!……ぼく、今度引っ越しすることになったんですよぉ!」
「へぇ、そうなんですねぇ」とコメントが流れてくる。……そっか。ぼくはもうすぐ引っ越すのか。……まあ仕方ないか。新しい環境に慣れるまで時間がかかるだろうけど、これも経験だと思って頑張ってみよう。
初配信が終わったあと、ぼくはふと思い立ってSNSを開いてみた。するとそこにはたくさんのコメントが書き込まれていた。
「おつかれさまでーす」
「声可愛かったですよー!」
「また来てくださいねー!」
「次はどんなゲームやるんですかー?」
「楽しみにしてますー!」
「次は何時ですかー?」
「待ってますよー!」
「待ってますよー!」
「待ってますよー!」
ぼくは、そんなコメントを見て少しだけ嬉しくなった。
ぼくはある日、動画サイトの生放送に出た。するとたくさんの視聴者が集まってきた。中にはぼくのファンだという人もいて、たくさんメッセージを送ってくれた。ぼくは嬉しくなって、つい調子に乗ってしまった。
「わーい!やったー!うれしいー!ありがとうございますー!これからも応援よろしくお願いしまーす!ありがとございましたー!ばいばーい!また遊びに来てくださいねー!」
……あれ?……なんか変だったかな?……まあいいか。きっと大丈夫だよね?……そうだよね?
ぼくはある日、夢を見た。ぼくの夢の中に神様が出てきた。そしてこう言った。
「お前さん、なかなか良いことをしているようだのう。偉いぞ。そこでだ。わしから褒美をあげようと思うのだが……」
「えっ?……ほ、ほんとですか!?」
「ああ、本当だとも。だから目を閉じて心の中で念じてみるがよい」
「はい、わかりました」
ぼくは言われたとおりにやってみる。すると、目の前に突然ウィンドウが表示された。
「おお、なんか出たぞ。どれどれ」
『あなたはバーチャルYouTuberになりました』
「それがどうしたんだ?」
『あなたの登録者数は0人です』
ぼくはベッドから飛び起きる。
「えっ!?なんで!?」
ぼくはパニックになる。……どういうことだろう?
「だって、ぼくはちゃんとVtuberとして仕事してたし、お金だって稼いでたし、人気もあったし、フォロワーだっていたし、それにファンレターだって届いていたし、だからぼくは立派なVtuberだったはずなのに……どうして!?」
「ふふふ、それはですね」
「えっ!?誰?」
ぼくは辺りを見回す。しかし誰もいない。
「私はあなたが見ている夢の中の存在です。つまり幻聴のようなものです。気にしなくていいですよ。それでですね、私が言いたいのは、要するに、あなたはただの幻覚だということです」
「……え?……どういう意味?」
「言葉どおりの意味ですよ。あなたは幻覚です。……そして、そのことにあなた自身が気づいていないだけです」
「じゃあ、これは現実じゃないってこと?」
「そうです」
「でもさっきまでぼくは確かに配信をしていたんだよ?」
「はい。そうでしょうね」
「じゃあ、なんでこんなものがあるんだよ?」
「それは私にも分かりません。……でも、ひとつ言えることがあります」
「なんだよそれ?」
「それはですね……それは、あなたが望んで、そうなったということです」
「はぁ?」
「あなたは、そういう人間になってしまったのです」
「なんだそりゃ?」
「とにかく、あなたはもう普通の生き方はできなくなってしまったということですよ。だから、せいぜい頑張ってください。……ふふ、では、またいつか会いましょう。ばいばーい」
ぼくは、目が覚めた。……なんだろう?……今の夢は……。
ぼくはある日、公園で犬の散歩をしているおばあさんに会った。
「あら?……こんにちは」
「あっ、こんにちは!お久しぶりです!」
ぼくたちは挨拶を交わす。すると、おじいさんのほうもこちらにやってきた。
「ん?……おう、あんたかい?」
「ええ、こんにちは。お元気ですか?」
「ああ、もちろんだとも。今日は天気が良いねえ。……ところで、あんたたち、知り合いなのかい?」
「いえ、以前ちょっと話したことがあって、それから仲良くなったんですよ」
「へぇ~、そうなのかい。……まあ、仲良しなのは良いことだ。……うん、そうだよな」
「はい!そう思います!」
「ああ、そうだとも。……良いことだよな」
「はい!」
「ああ、良いことだよな」
「ええ!」
ある日、ぼくはいつものように動画サイトの配信を行っていた。すると、ある視聴者さんからこんなコメントが来た。
「あなたは、どうしてそんなに優しいんですか?」
「えっ?」
「私はあなたのような人は見たことがありません」
「そっかー」
「はい」
「……ぼくは、ただみんなに幸せになってほしいだけなんだよね」
「えっ?……どういうことでしょう?」
「ぼくは、今までいろんな人に助けられてきたから、今度はぼくが困っている人を助ける番だと思ってるんだ」
「……」
「だからぼくは、ぼくにできることをする。それだけのことなんだよ」
「なるほど……素晴らしい考えですね」
「ありがとう。ぼくも嬉しいよ」
「でも、その考え方だと、あなたが不幸になるかもしれません」
「うん、わかってる。……それでもぼくは、ぼくのために頑張るんだ」
「……」
「……君には、そういう人っていないのか?」
「……います」
「どんなひとだい?」
「私の親友です。とても優しくて、綺麗で可愛くて、頭が良くて、スタイルも良くて、勉強もできて、運動神経も良いです。そして何よりも強い心を持っていました」
「それはすごいな」
「はい、私の自慢の親友です。……でも、彼女は少し変わり者でした。彼女は、自分のことなんてどうでもいいと思っている人でした」
「そうなのかい?」
「はい。……彼女にとって大切なものは、家族と親友だけです。それ以外の人間はすべてゴミです」
「どうしてそう思うんだい?」
「だって、彼女の親は彼女を愛してくれなかったし、友達は彼女に嫉妬していじめたからです」
「なるほどね。でもさ、君の言うとおりなら、ぼくはその人と仲良くなれそうだね」
「えっ?……なぜですか?」
「だって、ぼくはみんなに幸せになってほしいもん。……でも、君は違うみたいだしね」
「私は違いません。……ただ、彼女とあなたとは合わないと思いますよ」
「どうして?」
「それは……彼女があなたを嫌うからです」
「そっかー」
「でも、あなたがもしどうしてもと言うのであれば、私から説得します」
「ありがとう。……大丈夫だよ。ぼくは、君を信じてる」
「わかりました。では、またいつか会いましょう。ばいばーい」
月日が流れ、ぼくのYouTubeチャンネル登録者数10万人突破記念配信を行った。
「こんにちは!みなさん!ぼくのチャンネルの登録者数がついに10万人を突破しました!これは本当に嬉しいことです!皆さんのおかげです!ありがとうございます!これからもよろしくお願いいたします!」
「おめでとう!」
「やったぜ」
「ついにここまで来たか」
「おつかれさまです」
「おめでとう!!」
「お疲れ様」
「おめでとうございます。これからも応援しています。」
「皆様、ありがとうございます!」
あの夢の中で語りかけてきた存在や、神様は二度と現れなかった。でもぼくはこうして元気に活動しているんだ……。
ぼくVtuber シカンタザ(AI使用) @shikantaza
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