【娘へ】~for AZILE~
《どうやら俺は死ぬらしい。
徐々に血が失われて行っている。意識も途切れがちだ。
アズィールに「また来る」と約束をしたんだが、どうも守れそうにない。
だが、夢である『外宇宙の人間に会いたい』というのは叶った。
人間らしい外見はしていないが、地球の人類よりも知性を持った存在だ。
そして、偶然にも星の瞬きによる歴史を蒐集している種族でもあるらしい。
だから、最後の悪あがきにと、俺はこの宇宙人を利用させてもらう事にした。
やった事は簡単だ。
「俺が居た星の歴史だが、発信を管理するAIの不都合で途中で途切れるかもしれない。そこでだ、お前さん、俺の姿と記憶を使って、ちゃんと最後までやれるかどうか見に行ってやってくれないか?」
と、言ってみただけだ。
すると、俺の思惑を知ってか知らずか、この不定形の宇宙人は、俺の死後に俺の姿と記憶を使って、この宇宙船の残骸と共にアズィールの元へ向かう事を約束してくれた。
アズィール。
お前は言っていたな。
「何処の誰に向かってか分からないものを発信し続ける意味はあるのか」と。
どうだ。この宇宙人の存在で、受け取っている者は居ると分かっただろう。
こいつだけじゃない。
俺達が出逢って無いだけで、こいつらみたいな存在は大勢居るらしい。
お前がやっている事は無駄じゃないんだ。
この広い宇宙に、お前を必要としている奴は居て、お前がやっている事を必要としている。
お前が産まれた意味は、ちゃんとある。
最後の人類として、あいつの代わりとして、俺が残せるのはこれだけだ。
全部終わったら、好きに生きるといい。
一人にさせてすまなかったな》
――父より
【紡がれる星の物語 ~the sp[u]n star story~】 @dekai3
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