8ページ




「懐かしいなあ」

 廃校になった校舎で私は写真を見ながらつぶやく。

「そ、だね」

「海人、小学六年生だよ」

「みさ、き、も」

「そうだった。にしてもあの時のホームランは凄かった。今でも印象に残っているよ」

 海人は照れ笑いをする。

「来週、野球の試合があるんだって? バカ佐藤に聞いたよ」

「ああ」

「あいつもまだ野球続けてるんだね」

「そ、みたい」

「私も応援に行くよ」

「あり、が、とう」

「ホームラン、期待してます」

「がんば、る」

 写真が刻んだ思い出をひとつひとつ丁寧に思い出す。みんなとの思い出を、私たちの思い出をまた大切に心の中にしまう。そうやっていつまでもいつまでも色あせないように私の心の中に生き続け、海人とのこれまでの時間を、これからの時間を、大切に私の記憶に刻む。




「おーい、お前らー、野球しようぜーッ」

 バカ佐藤が現れた。せっかくいい感じだったのに台無しだよ。

「おっとその前に。結婚おめでとうな。これからもどうぞお幸せに。ヒューッ、ラブラブッ」

 変わってないなバカ佐藤。

「向こうにみんなが待ってる。さ、走るぞ」

「いこう、みさ、き」

 海人が私の手を引っ張っていく。


 この幸せな時間よ、どうか永遠に続きますように。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私の幼馴染み 十年前、そして今 とろり。 @towanosakura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ