親父の追懐

 親父へ。


 先日、無事に順也の葬儀が終わったよ。

 これでひとまずは当局の追跡と調査も終了になるそうだ。

 立場のある大人たちは、こんな茶番しかできないからさ、後先考えずに動ける子どもが羨ましいよ。

 いや、後先考えないのは親父も同じだったな。

 いくら大事な孫を助けるためだからって無茶し過ぎだろ?

 こっちだっていろいろと動いて、たくさんの人が無茶して、何とか穏便に済ませられるように努力してたのが全部パーだよ。

 順也も親父も短気過ぎるだろ、まったく。


 それにしても、昔取った杵柄とはいえ、あの裏庭に置いてあった骨董品のFO、いや、親父の時代はUFOか、あれ、ホントに動くとは思わなかったよ。

 まあでもそのおかげで、機体が古過ぎて追跡不可って結論に持っていけたんだけどな。


 そうそう、二人の戸籍は親父の養子って事で調整しておいた。

 彼女の顔を知ってる人が多くいるこっちで暮らせない以上、それが一番いい。

 大戦後に戸籍申請してなかった故人の子どもを引き取った。ご近所さんにはそう説明しておいてくれ。

 当局の識別コードも抹消してあるけど、首の方は処置するまで服装で隠しておいた方がいいかもな。

 もっとも、近所付き合いもそんなになかったっけ。

 まあ、しばらくは三人で仲良くやってくれ。

 俺ももう少し、身辺が落ち着いたら遊びに行くよ。


 それじゃ、に宜しく伝えてくれ。

 命を賭けて守った彼女を、大切にしろってさ。




―― 了 ――

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誰にも言えない懐中恋慕 K-enterprise @wanmoo

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