たった一行だけが残された詩

 ちょっと風変わりな部長と、彼女に惹かれたふたりの部員の、おかしな部活動のお話。

 高校の部活ものであり、またミステリでもあるお話です。
 いわゆる日常の謎、あるいは「人の死なないミステリ」的な軽い短編かと思いきや、ガッツリ大掛かりな物語だったりするので侮れません。

 いや、それはそれとしてしっかりライトミステリでもある……というか、彼ら三人の関係性やその掛け合いが楽しいのは間違いないのですけれど。
 個性的なキャラクターが光る『部長』のみならず、視点保持者の『さやか』さんや、その部活仲間的な立場の『光村』くんも。
 部活を通して(というか、より正確にはたぶん部長の存在を通じて)繋がる彼らの、何か友情のような信頼のような関係性が、読んでいてとても爽やかなところが大好きです。

 彼らの挑む謎は、ある日部室の奥底から発見された一行の詩。
 もとい、ほとんど内容の欠落した詩のうちの、唯一残った『叫んで五月雨、金の雨。』の一文から、その全文をどうにか復元する、というもの。

 初めはなんのことはない、ただの偶然や気まぐれのようにして始まった物語が、しかし真相を追うごとにどんどん思わぬ方向へと進んで——という、その予想外の展開もまた魅力のひとつ。

 とはいえ、詳細に関してはここでは触れません。
 そこはもちろんミステリの醍醐味ですので、ぜひともその目で確かめてみてください。