星明かりの下 うたう歌
この小さな孤島に伝わる
人魚の伝説。
このエメラルドグリーンの美しい海には、
岩礁に棲む、セイレーンは歌う。
透き通るようなその歌声は、とても美しく
人々の心を惑わせた。
ある星が綺麗な夜。
船は遭難したり、難破したり、
たくさんの人が海から戻らなかった。
岩礁には、セイレーンに喰い殺された
骨や腐りかけた肉が山をなしている。
行き場を無くした魂たちが、この海を
海に出れず困った船人たちは、この孤島の有名な
一緒に船に乗り、唄って欲しいと。
唄人たちは船に乗り、音楽を奏で、力強く歌を唄う。
その唄声は、人々の心を震わせた。
船人たちは、唄人たちの音楽と唄声に魅了され
セイレーンの歌声は、全く耳に届かず、船は無事に帰港した。
唄声に助けられたのは、船人たちだけではない。
セイレーンに身体を奪われ彷徨う魂も、優しい唄声に癒され、空へと昇っていく。
還るべき場所へ。
———この伝説が、のちにこの島の
空を見上げると、下弦の月が浮かんでいる。
ソノ、ユカリ、ウタ、オトの四人は、いつもの場所へと向かう。
幼い頃から、星が見える夜には、続けていることがある。
家の裏には、小高い丘がある。
一面に咲いた、シオンの花。
淡い紫色が全体を覆い、白色と青色が、ぽつぽつと色を差している。
晴れた空の下、丘を見ると、儚さを想う花のようだが、
雨上がりには、紫色に雨粒がきらきらと輝いて、格別の美しさがある。
ソノ、ユカリ、ウタ、オトは、この場所がとても好きだ。
みんなで追いかけっこをしたり。虫を捕まえたり。
宝さがしをしたり。幼い日々の想い出の場所。
シオンの花は、四人を見守っているかのようだった。
その丘の中心には、六角形の
そこには、みんなで作った、竹の縁台が置かれている。
ソノ、ユカリ、ウタ、オトは、ここに自分の相棒を連れてくる。
昼も夜も、相棒を奏でながら、いつも一緒に唄っている。
ある時は、嘆きの唄を。
ある時は、喜びの唄を。
星が見える夜は、相棒を奏でながら、必ず三曲唄う。
一曲目は、祖父母と両親に教えてもらった唄の中から一つ。
二曲目は、自分たちで作った唄の中から一つ。
三曲目は、ずっと変わらない、この島に伝わる
星夜に響く、和楽器の音色。
心を震わせる、力強い唄声は、どこまでも遠く響く。
大好きなこの島。
じっちゃん、ばっちゃん、チチ、トト、ハハ、カカに、感謝を込めて。
海の向こう。
僕らに命をくれた人に届きますように。
そして、
いつか出逢う、遠く離れた場所にいる人たちへ。
———どうか、自分自身を愛して…。と、祈りを込めて。
ଘ(੭*ˊᵕˋ)੭* ੈ♡‧₊˚*:..。o○☆ あ と が き ☆*:..。o○☆‧₊˚*♡ *:..。o○☆
いかがでしたでしょうか?
西の島のお話し
【 リナリア ― 月明かりの下 うたう歌 ― 】も
https://kakuyomu.jp/works/16816927862675874358/episodes/16816927862879212263
ご一緒にお目通しいただければ幸いです。
また違う島での物語。
両方の世界から、そこにある “ 何か ” を感じていただけたら。
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シオン ― 星明かりの下 うたう歌 ― 枡本 実樹 @masumoto_miki
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