苦い何かがじわりと胸に食い込んでくるような読み味

 突然亡くなった「亜希さん」の葬儀と、そのために集まった親類たちのお話。

 重く静かな読み口の現代ドラマです。
 いやもう、何も言葉が出ない……。
 これではレビューになってないと思いつつ、それでもなお言うのですけれど、本当にうまく言葉にできません。
 ただただすごかったです。
 圧倒されたというか、気がつけばぐいぐい惹きつけられていたような感じ。

 内容は非常に端的というか、特に難解な表現も出来事もないと思うのですけれど、正直言ってとてもすべてを汲みきれている気がしません。
 物語的に、きっと描かれているはずのいろいろなものを読み落としている気がする。
 おかげで内容についてはうまく言える気がしなくて、それでもなお面白い。

 読み進めている最中の、一文一文に感じる何か歯応えのようなものが、もう本当に最高でした。
 例えばこう、何かわかりやすい『答え』に当たる部分のようなものがなくて、なのに一本の物語としてのこの充足感は一体何?

 大変面白かったです。
 とってもいい小説を読んだー、というこの読後感。とても素敵な作品でした。