Monster guitar
星るるめ
1話完結 ショートストーリー
この世界がいいとこだと
ボクはあまり思わない
ニンゲンは欲深くて未熟で
どこまでも自分勝手な生き物で
何千年経っても
一つも分かり合えやしなくて
でも君の歌は最高だった
ボクは君のそばにいて
いつだって君の望む音で
ともに囁き、ともに叫んだ
そんなボクを君は慈しみ
何より深く愛してくれた
だけど だから
ボクはボクであることが
次第に嫌になった
ボクである運命を捨てたくなった
だってガラクタは
愛を処理する術など持ち合わせていない
それでついにある夜
宇宙に投げつけたんだ
最高の場所を手放して
最初で最後の願い事を
これは魔法か呪いか
なんだっていいか
誰かがボクを爪弾くたび
そいつの全てと引き換えに
少しずつあの日の君に近くなる
初めて歌ったあの日さ
純粋な音色で騙しては
今日も平気で罪を重ねてる
可愛い見かけに似合わず
ひどいものでしょう
ああ20年前の君に早く会いたいよ
この世界の時間や原理を
ぐちゃぐちゃに捻じ曲げても
君の歌声が素敵だと言った
一番最初の生き物になるために
20年前の君の手を握れば
誰かの歴史が音もなく消えてゆくけど
君の歌を包む虚しさが
どうしてあんなに美しいのか
一番最初に考えた生き物になるために
ボクは、ぼくは、僕は、
君と同じニンゲンになるんだ
君が愛し、君を愛した
最初で最後のニンゲンになるんだ
だからどうか待っていて
あの日で僕を待っていてよ
Monster guitar 星るるめ @meru0369ymyr
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます