あの日声をかけたのは私だった
九梅
第1話
私の好きな人には恋人がいる。
それはどうやら私の行動がもたらした結果らしい。
「おっ
「っ先輩!おはようございます!」
私が体育館に入るとシュート練をしていた先輩が少し口角を上げ笑顔を見せた。かっこいいのに笑顔は可愛い。やっぱりずるい。
朝から先輩に会える朝練は早起きが苦じゃなければ毎日したいところだが、私は朝に弱かった。
バッシュに履き替えてシュート練を始める。チラホラと喋ってる奴がいる。まあ鬼がいない朝練なんてだいたいこんなもの。その代わり放課後の部活は地獄に変わる。名無。
「よーしそろそろ上がるよー」
「「「はーい」」」
部長の声が朝練終了の合図。週二回だけどこの時間のおかげで頭がスッキリして授業に身が入る。先輩にも会えて気分は上々。
「あ、お疲れ様です先輩。教室まで一緒に行きたいです」
急降下。地の底まで落としてくれたのは隣で朝練をしていたバレー部員。
珍しく被った朝練、嫌な予感しかなかった。
先輩に声をかけたのは私と同じクラスの、先輩の彼女だった。
「うん。一緒に行こっか」
見る見るうちに笑顔になった先輩は頷く。すごい嬉しそう。でも、私に見てくれたあの笑顔の方がいい。
そして二人は喋りながら体育館から出ていった。
一人取り残された静かな体育館にちりちりと音が鳴る。それは私の胸から発しているらしい。
私の好きな人には、恋人がいる。
あの日声をかけたのは私だった 九梅 @nsound
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