第31話 オムニバスドラマとある夫婦の奇跡

 9月X日


 オーディション後に林マネージャーが言っていたことは本当だった。


 オムニバス形式というのだろうか?同じテーマで複数の監督が撮ったドラマをシリーズとして放送するらしい。今回のシリーズは予算も期間も役者の人数も控えめに抑え、結婚をテーマにして1時間でカップルの馴れ初めから結婚に至るまでを物語る。


 1クール3ヶ月の間に毎週1本放送され、毎週1組、計12組のカップルが登場する。僕が出演するのはその第5話、寮母さんと学生の恋愛。ちなみに第4話は本多君が出演するらしい。気になる。


 〜〜〜


『とある夫婦の軌跡 : 第5話 彼女は待っていた』


 主演:黒川ゆき、緋月朔夜


 リビングで幸せそうに赤子をあやす優しそうな妻とソファに座りそれを眺めて微笑む夫。妻は眠ってしまった赤子をベビーベッドに寝かせてひとなですると、アルバムを持って夫の隣に座る。


「あのころはかわいかったなぁ」


 ページをめくると入学したてだろうか、初々しい制服姿の夫の写真が目に入る。


「ずっと待ってたんだからね?」


 どこかの食堂の祝いの席での写真だろうか、他にもぎこちないながらもお互いを気にするような若かりし頃の夫婦の写真が並ぶ。


「僕も、あきらめなくてよかった」


 アルバムをはさんで夫婦は笑いあう。


 〜〜〜


 彼女と出会ったのは地元から離れた高校に入学して、学生寮に入ったときだ。


「これからよろしくね?」


 寮母として挨拶してくれた10歳年上の女性に、僕は照れてしまって、か細い声でよろしくお願いしますと言うのでやっとだった。


 でもそれは僕だけじゃない。男子校の学生寮に年頃の女性がいると思っていなかった同級生たちは、みな浮き足立ってみえた。


 〜〜〜


 入学してしばらくたち、高校生として日々を過ごすのにも慣れてきた。


 寮母さんは朝と夕方寮にやってきて、朝ごはん、お弁当、夕食を用意してくれる。備品の管理などもしているようだ。


 掃除は寮生で持ちまわりなのだが、家を出たばかりの僕らの掃除の出来なんてしれている。掃除が行き届いてないと世話を焼いてくれて、学校が終わってすぐに寮に帰ると、寮の前を掃き掃除していたりキッチンや風呂の排水溝を掃除する寮母さんに出会うことがある。


 寮母さんはきまって笑顔でおかえりなさいと言ってくれる。それにただいまと返すのが親元を離れた僕らの心ににじんわりとしみる。


 季節は夏になり、他の寮生がだんだんと部活やアルバイト、恋愛などに傾倒していくなか、僕はすぐに帰宅して自室で勉強したりたまにゲームに興じる日々を続けていた。高校受験で志望校に行けなかったこと、それはあまり気にしていないつもりだったし今通っている高校は気に入っているが、部活をしたり遊びに行こうという気にはならなかった。同室の寮生は野球部で遅くまで部活動があり帰ってこない。人恋しさから次第に寮母さんのいる食堂で勉強するようになった。


 僕は勉強を。寮母さんは料理をしながら、他の寮生もいない中、最初は挨拶をしてちょっと目が合うくらいだった。けど何度も顔をだすうちにだんだんと会話をするようになった。


 ボサボサの髪を整えたらモテるよ?


 好きなおかずはなに?


 たわいのないことを話したり、寮母さんがたまにくれるアドバイスを実行してみたりする日々。


 苦手だって言った野菜があの手この手で料理されて出されて、食べているうちに食べられるようになったり。


 髪を整えたら他校の女子に話しかけられたって話したらやたらと食いついてきたり。


 そんな寮母さんに僕はだんだん惹かれていき、寮母さんのことが好きだと気づくのに時間はかからなかった。でも、思いを伝えることはなかなかできなかった。


 三年生、受験生になった年の春、ようやく僕は寮母さんに思いを伝えた。


 つたないながらも思いの丈は全部伝えられたと思う。


 彼女の答えは、「だめよ」だった。


 年の差も大きい、それに僕はまだ学生。それも受験生であることを言われるとなにも言えなかった。彼女の口からつむがれる優しくさとすような言葉を受けて、悲しくもあったがどこか安堵あんどもしていた。それに。


『まだ若いんだから、いろいろ経験して、やっぱりってなったらそのときは戻っていらっしゃい。今は、ほら。今度こそ志望校に合格しなくちゃ』


 最後にかけてくれた言葉に諦めなくてもいいのかなって思えた。


 〜〜〜


 彼女に思いを伝えた後、僕は頑張った。世の受験生と肩を並べ、四闘五楽しとうごらくで勉強する日々。同室の学友は野球で私立の大学に進学が決まり、部活を引退してからもグラウンドに通い練習している。


 それから、なぜか彼女からのスキンシップが増えた気がする。夜勉強していると背中にブランケットをかけてくれたり、夜食や弁当を渡してくれる際そっと指が触れ合うような些細ささいなことだ。


 きっと気のせいだろう。僕が意識をしすぎているだけ。でも、そんな些細なことが僕にはうれしくて。簡単にモチベーションがあがってしまう自分に笑みを浮かべつつ、勉学に励んだ。


 そして、受験の前日。


 もうこれ以上は勉強しなくてもいいだろうとは思う、詰め込むだけ詰め込んだ。明日に備えて早く寝ようという気持ちはあるものの、失敗したくない気持ちからかなかなか寝付くことができず、受験生としての日々の終わりが近いことをかみしめながら布団から出て机に向かっていた。この時期はもう授業もないので同室の学友も受験生の僕に気を使って実家に帰っており、いない。



 これもわかる、これもできる、と使い込んだ問題集を見直していると、ブランケットが背中にかけられる。そしてブランケットごしに優しく抱きしめられる感触。


「えっ」

「これは寮母として、だからね」


 暖かく柔らかい感触、よく母に抱きしめられていた子どものころ以来記憶にない優しい安堵感。


「がんばったね、キミはよく頑張った」


 頭を撫でられる。優しく髪を撫でられる。


「眠れないの?」

「うん、なにかしてないと落ち着かなくて」

「そっか、じゃあ」


 背中に感じていたぬくもりが遠のく。振り向くと寮母さんが僕のベッドに座っていた。


「おいで」


 ふらふらと立ち上がり寮母さんの前に立つと、寮母さんは座っているすぐ隣をぽんぽんと叩く、促されるまま隣に座る。引き寄せるように上半身を横にたおされ、足はそのままに寮母さんの膝を枕に寝るような体制になる。


「膝枕。耳かきしてあげる」


 頷くことで答え、まばたきをして心を落ち着ける。思えば耳かきなど最後にいつしただろうか。思い返しても思い出すのは問題を解いた日々ばかり。耳に手が添えられる感触、くすぐったくて耳が熱い。竹の耳かきが優しく中に入ってくる。そっと目を閉じて耳かきが中をこする心地よい感触と音に集中する。時折覗き込んでいるのか寮母さんの少しウェーブのかかった長い髪が顔にかかる感触とシャンプーのいい匂いがする。みじろぎをすると柔らかくあたたかい太ももを意識してしまって顔が熱くなる。


「動いちゃダメ」


 耳元で吐息混じりにささやかれて背中から腰にはしる甘美かんびをぐっとこらえる。


「今日は、私のことお母さんだと思って甘えていいからね」


 耳かきが抜かれる。名残惜しいと思うさなか耳に優しく息を吹きかけられ、思わず吐息がもれる。


「見て?おっきいのいっぱいとれた。ちゃんと耳掃除しないとだめだぞ?」


 手のひらに貯めた耳垢を見せてくるのをボーっと眺める。


「仕上げに、梵天ぼんてん。使ったことある?」


 ぼんてん?と問おうとしたのに、耳の中にふわふわしたものがはいってくる感触に声にならない声が出てしまう。


 そのまま柔らかくこそばゆい感触が耳の穴の中をき回し、奥へ手前へ。踊るように舞うように耳の中を翻弄ほんろうされて頭が真っ白になる。ひらいていた目をぎゅっとつぶり、震える手を握りしめる。


 ほどなくしてそれを抜き取ると、またふーっと息をかけられる。愉悦ゆえつを洗い流すように何度も吹きかけられる暖かな吐息に安心する。


「ふふ、気持ちよかった?梵天、初めてだったの?よだれたれてるよ」


 寮母さんは楽しげに笑い、反対側の耳をだしてと促す。促されるまま足をベッドにのせ、体を反転させて顔を寮母さんのおなかに向ける。足を伸ばしたことで血流も通り、先程よりリラックスできて心地よい。


「じゃあ、こっちもやっていくね」


 耳に手を添え耳かきを入れようとする寮母さんがかがむ。先程は背を向けていて気づかなかったが、対面してるいると鼻先を寮母さんの服がくすぐり、心地よい香りがする。


 丸みを帯びた女性の腰回りを想像してしまい、時折胸元が視界に入る。いけないと思い目を閉じると、太ももや耳かきの感触をより強く感じる。だんだん夢見心地になってきて、優しく話しかけてくれる声にまどろんできた。


「よし、きれいになったね。眠くなってきたみたいだしお布団入ろっか?」


 促されるまま立ち上がると、寮母さんは掛け布団をめくってくれて、僕はそのままベッドに入り横になる。寮母さんは僕にそっと掛け布団をかけると布団の上から優しく撫でてくれる。


「1年間がんばったね。えらいね。明日は私が起こしてあげるから安心して寝てね?」


 枕元を優しくトントンされながら、いつのまにか僕は深い眠りに落ちていた。


「ふふっ、おやすみ。」


 〜〜〜


 カーテンを少しだけめくり、外を見る。寮の前の道はもう真っ暗だ。


「夜道はあぶないからね」


 私は真夜中に帰宅するのを諦め、つい1時間ほど前まで彼が座っていた勉強机の椅子に座る。


「私って意外と大胆だったんだなぁ」


 後ろから抱きしめてしまった、膝枕まで。


「ドキドキした、、」


 初対面の時、照れてる姿が可愛かった。髪型とか、私がからかったらちょっとずつ変わっていってかっこよくなっていったのが嬉しかった。苦手だって言ってたものも毎回残さず食べてくれて、だんだん普通に食べられるようになる様子が愛しかった。


「ちょっとやりすぎちゃったかな?」


 求められて、好きだって言われて嬉しかった。でも、彼はまだ若いし男子校の学生はただでさえまわりに異性が少ない。いっときの感情で後悔してほしくなかった。それでも、まっすぐ自分に向けられる好意が嬉しかった。


「がんばってね。いきたい大学にいって、なりたい自分を見つけてね」


 これまでのことを思い返し赤面する。これまで寮生にこんなに踏み込んだことをしたことはなかった。夜食を作ったりしたのも彼くらいだ。特別扱いしすぎてしてしまったなと反省しつつ、彼の安心した寝顔を見て、まぁいいかと思い直す。


「いっぱい経験積んで、でも、疲れちゃった時は帰ってきてね」


 スマートフォンのアラームをセットし、腕を枕にして彼の3年分の努力が染み込んだ勉強机に顔を伏せる。少しだけ顔を上げて目で彼の寝顔を追う。


「待ってるから」


 そして、私も瞼を落とす。


 〜〜〜


 明くる日、かすかなアラームの音を感じ、次にゆさゆさと体をすられて目を覚ます。


「おはよう、ちょっと早いけど朝ごはんにしよ?」


 上体を起こすと腰の後ろに手を回した寮母さんが見下ろしている。


「すぐ作るから顔を洗ってきて」


 まだ寝ぼけたまま歯を磨き、顔を洗う。幾分かしゃっきりした頭で食堂に向かう。


 調理をする寮母さんの後ろ姿をぼーっと眺める。寮母さんは味噌汁を小皿についで味見すると、ひとつ頷いてトレーに載せた朝食を手渡してくれる。


 そのまま朝食を食べる僕を見ながら弁当を作り巾着袋に入れると、お茶をもって僕の目の前の席に座る。


「昨日はよく眠れた?」

「はい、とても。よく眠れました」

「よし」


 寮母さんは満足そうに頷くと食卓に肘をつき右拳を左手で包んで包んだ方の手を右頬に当て寄りかかるような姿勢で僕を見つめる。そのまま寮母さんに見守られながら食事を取る。


「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」


 部屋で着替えて荷物を持ち玄関へ行くと、先まわりした寮母さんの姿が。


「はいお弁当」

「ありがとうございます。いってきます!」

「いってらっしゃい!」


 ・・・


 手渡した弁当を受け取り寮を出る彼、彼の姿が見えなくなるまで手を振っていた私はそっと玄関を閉める。そろそろ他の寮生が起き出してくる時間だ。


「がんばれ」


 ・・・


 会場につき、試験官の説明を聞く。


「それでは、はじめてください」


 一斉いっせいに問題用紙をめくる。解ける。時折横を歩く試験官も気になることはなく、マークシートを埋めていく。


 問題を見てマークシートを埋める、そして確認する。順調に教科をこなし昼休憩、弁当を取り出し食べながら寮母さんに思いをせる。食べ終わった僕は気持ちを入れ替えようと頬をパンパンとはたき気持ちを入れ替え参考書を読む。


 午後の試験も順調に終わった。しっかりとした手応えを感じ寮に戻ると、出迎えてくれた寮母さんに胸を張って満面の笑みを見せる。


 寮母さんは自分のことのように喜んでくれた。


 〜〜〜


 卒業式後、寮の食堂でささやかな祝いの席がもうけられた。テーブルには寮母さんの作ったで家庭的な料理が並ぶ。普段よりちょっと豪華なそれはどれも食べ慣れた思い出の料理だ。寮生みんなで和気藹々わきあいあいと食事をとっていると1人が写真を撮ろうと言い出した。


 ざっと並んだ最前列の真ん中は寮母さんだ。僕は寮のみんなに押されて照れながらもその不自然に開いた隣に並ぶ。横目で寮母さんを見ると目が合う。微笑む僕らに合わせたかのように、カメラのタイマーが時間を告げてシャッターがきられる。思い出の写真になりそうだ。


 〜〜〜


 食堂でスマートフォンを見つめる僕。寮母さんも後ろから画面を覗き込んでいる。


 時計の針が10時をさす。


「じゃあ、ひらきます」

「うん」


 寮母さんに一声かけて大学入試の合格発表のサイトを開く。合格できてると思う、確信はある。でもほんの少し心配もある。そんな複雑な表情で画面を見つめること数秒、スマートフォンの画面に合格の文字が浮かぶ。


「やったね!」

「う、うん」


 背中にくっついて喜ぶ寮母さんに照れつつ返事をする。合格した、合格できてる。喜びの裏でもうひとつ、合格したら今一度想いを伝えようと思いここに来たことを思い出す。決意をもって振り向く。


「寮母さん!僕、っ」


 唇に人差し指が押し当てられる。


「だめ。まだ、だめ。君が社会に出て、いろいろ経験して、それでもまだ気持ちが残ってたらその時にその言葉はちょうだい?ね?、、待ってるから」

「は、、い」


 〜〜〜


 それから僕は大学生になり、卒業し、就職し、日々をすごしていた。充実しながらもめまぐるしい日々。


 でも、いつもどこか空虚で、心にぽっかり穴が空いたかのように感じていた。


 そんなある日、同期に誘われて食事行った時だ。食事を注文し、待っている間に話しだす。


「もう同期で独身なのもオレらだけか」

「そうだな」

「お前どうなの?彼女いたろ?彼女からせっつかれたりしてないの?」

「だいぶ前に別れた」

「はぁぁ!?別れた?あんないい子と?」

「なんか、合わなくてさ」

「合わなくてってそんなお前、、まぁいいか。今度また飲みに行こうぜ!適齢期独身組でさ!もう俺たち2人だけだけど」

「適齢期、、?」


 ハッとした顔で同期の顔を覗き込む。


「えっ、、僕らって適齢期なのか?」


 同期は困惑顔だ。


「そりゃあ適齢期だろ?周りみんな結婚しだしてさ。結婚式にも呼ばれるばっかり」

「すまん、急用ができた!」


 机に2千円を置き立ち上がる。


「おいおまっ、メシは!?」

「食っといてくれ」

「お客様!?」


 頼んだ食事を持ってきた店員さんの困惑顔を尻目にタクシーを拾い駅まで急ぐ。いかなくちゃ。とりあえず新幹線に乗る!


 ・・・


「あの、なにか不備がございましたでしょうか?」

「ごめんごめん、急用だってさ!ところでこれ、1人分余っちゃったんだけど一緒に食べない?お代は払うからさ」

「勤務中ですので、お包みいたしますね」

「ありがと!ついでに今度食事でもどう?」

「ふふっ、私でいいんですか?」

「もちろん!」


 ・・・


 駅のホーム、改札を駆け抜ける。駅前にタクシーはない。駅から寮まで走る。息を荒げ、革靴で走る。ついた!寮の前で息を整える。


「あの頃のままだ、変わってないな」


 チャイムを押す。奥からスリッパのパタパタという足音が聞こえる。玄関をガラッと開けて懐かしい女性が顔を出す。


「はーい!どちら様で、、」

「ただいま」


 僕の顔を見て固まっていた寮母さんと見つめ合うことしばし、彼女は喜色満面で迎えてくれる。


「おかえりなさい!!えー!?おっきくなって、お母さんに会いに来てくれたの?」

「お母さんて、たしかに寮母さんだけど」


 微笑みながら歩み寄り、目を見つめ、手を握る。言葉はなにも考えなくても出てきた。


「やっぱり僕、あなたがいないとだめでした。結婚してください」


 寮母さんはしばらくぽーっとしたあと、ゆっくりと手を握り返してくれた。


「はい、、。えっ、待って?結婚?待って待って」

「いやだ、もう待たない」


 雰囲気はいい、不意打ちとはいえ言質げんちもとった。もう逃がさないという強い意志で彼女を抱きしめる。


「ちがうの、いきなり結婚なんてもったいないじゃない。お付き合いからがいい」

「なら、結婚を前提にして付き合ってください」

「う、うん。ならいい、、ん?」


 肩越しに困惑顔を浮かべていそうな彼女を抱きしめて、天を仰いだ。


 〜〜〜


 そして、結婚式。義父の腕をとり彼女がバージンロードを歩いてくる。神父が誓約を促す。


『健やかなるときも、病めるときも、喜びの時も悲しみの時も、いついかなる時もお互いを愛し、尊重し、その命尽きる日まで共に歩むことを誓いますか?』

「誓います」

「誓います」


 彼女の指に指輪を通す。そして僕の指にもかのしが指輪をはめる。


 そして、ヴェールををあげ、キスをする。


 ステンドグラスの逆光のもと、拍手に包まれる。


 〜〜〜


 エンドロールには演者、スタッフ名とともにセピア色の写真が流れる。学生時代、そして尺の都合でカットされた大学時代、社会人時代、付き合ってからのデート、そして新婚生活。最後に、子どもを間に座る夫婦の幸せな家族の日常の一枚で締めとなった。


 〜〜〜


 余談だが、クライマックスの「お母さんに会いに来てくれたの?」は黒川さんのアドリブだ。このドラマを通して寮母さん役の黒川さんと仲良くなった。


 撮影は短期間だったため、撮影できるシーンから撮っていったのだが膝枕で耳かきをするシーンは初日に撮影した。その際、あんなに鋭かった緋月君の目がふにゃふにゃになっていくのがすごい面白くて、以降の撮影もリラックスして演じられたとのこと。


 あのシーン、顔だけとか背中だけで表現しなきゃいけないのに台本で心情が豊かに語られていてすごく大変だった。


 撮影後の打ち上げて冗談めかして機会があったらまたやってあげようか?と黒川さんに言われた僕は照れたそぶりで苦笑いをしたのだった。

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