3-4:訓練

「ラインさん!女の子の服を脱がすとか何してるんですか!!しかもこんなに傷をつけて!!」


「いや・・・あの傷は私が付けたものでは・・・」


「なに女性の裸を見てるんですか!!このムッツリスケベ!!」


「ぐへぇ!」


 ラインさんは恐らく部下と思われる人に思いっきり殴られ、10mくらい飛んでいった。・・・人の身体ってあんな飛ぶんだね。大丈夫?死んでない?首が曲がっちゃいけない方向に曲がってた気がするけど。


「ぐ、ぐぐ・・・、あれは不可抗力です。彼女の魔法の検証をしてたんですよ。」


 あ、生きてた。


「何言ってるんですか!検証そっちのけでガン見だったじゃないですか!このダンジョンの管理者は私ですよ!しっかりモニターで見てましたからね!彼女が一向に気が付く気配がなかったから急いで飛んで来たんですよ!」


「いや・・・その、それは「いいから早く仕事に戻ってください。雨宮さんは私が担当しますので!」・・・あ、はい。わかりました」


 そしてラインさんは力なく帰っていった。ラインさんが悪いから仕方ないね。


「さて、変態も帰ったことですから自己紹介を。このダンジョンを管理するレイアス・ソーサラーです。魔法師団の特別顧問を務めてます。これからあの変態に変わってあなたを鍛えていきますのでよろしくお願いしますね。クソガ・・・バk・・・陛下には私から話を通しておきますのでご安心を。」


「あ、はい。よろしくお願いします。」


 レイアスさんは、白髪で白目、身長170㎝くらいの美しい女性だ。ホットパンツにへそ出しTシャツととてもラフな格好をしている。それはそうといま陛下のことをクソガキとかバカとか言おうとしてなかった?


「それは気にしないでください」


 なっ!?心を読まれた!?


「さて、では早速続きをやりましょう。といっても検証はもう終わってるんですよね。そしたら、えーっと、鑑定かけてもいいですか?雨宮さんがどんなスキルを持ってるか把握したいので。」


 スルーですかそうですか。


「え?鑑定でステータスってわかるんです?」


「あぁ、私の鑑定スキルは看破とかの鑑定系スキルと統合されてるのでわかるんですよ。」


「あっ、そうなんですね。まぁ、大丈夫ですよ。」


「ありがとうございます。では使いますね。・・・おぉ、魔力視を持ってるんですね、これは珍しい。ただ全体的にスキルレベルが低いですね。まぁ、これから鍛えていけばいいでしょう。」


 そしてなにやらぶつぶつと言いながら、何もない所から本を取り出した。インベントリ的なやつかな?


「んーっと、よし。これでいきましょう。お待たせしました、雨宮さん。雨宮さんの育成方針が決まりました。雨宮さんは近接タイプですので、近接戦で使う魔法技術を伝授していきます。ですが、その前提として必要な魔力制御のレベルが低いのでこれを10まで上げてください。魔力制御を鍛えるには、こんな感じに魔力で球を作って、これを色々と操作してくと伸びていきますよ。極めるとこんな感じのこともできます」


 そしてレイアスさんは掌の上に光り輝く魔力の球を生成し、それを身体の周囲で回したり、上下で逆方向に回転させりした。そこから更に弄って魚、狼、犬、狐、小人などを生成して周囲に飛ばしていた。しかもそれだけでなく、最初は半透明な白だったものに徐々に色がついていき、最終的に本物と見間違うほどのものになった。最後にレイアスさんの掌に戻り、集まって球となり身体の中へと吸い込まれていった。最後のはもしかして魔力の吸引?


「とまぁ、こんな感じですね。ここまで出来る必要はないですが、魔力の球を作って自在に操れるようになればいいです。目安としては一日中、それこそ寝てるときでも維持できる程度になれば合格です。そこまで行けば魔力制御のLvは10になるでしょう。とにかくまずはやってみましょう。恐らく球を作るくらいは既に出来ると思いますよ。」


ピコン『サブクエストを受注しました。”魔力制御のスキルレベルを上げよう”』


サブクエスト:魔力制御のスキルレベルを上げよう

<概要>

 魔力制御のスキルレベルを上げる。


<クリア条件>

□魔力制御のスキルレベルが10になる。



 お、クエストという形で受注した。というか 寝てるときでもってきつくない!?本当にできるの?

 ま、まぁそれはともかく、レイアスさんがやっていたように掌から・・って思ったけど今は狐だったわ。尻尾の先から作ろう。


「くっ・・・んっ!」


「ふむ、とりあえず形にはなってますが、魔力にロスがありますね。魔力を流し続けないと形を維持できないのではだめです。一度球を形成したら、それ以上魔力を流すのは止めましょう。それでできるはずです。」


 これは大変だ。維持するだけでもキツイ。魔力を流すのを止めるっていうけど、止めたらすぐ消えるんだけど?


「最初はそんな感じで消えてしまうでしょうが、何度も繰り返しているとそのうち感覚を掴めるようになりますので続けてください。」


「どんなイメージでやるといいとかあります?」


「んー、そうですね。人によって感覚が違うのなんとも言えないですね。こればかりはご自身で感覚を掴むしかないんですよ。あ、魔力視を使うといいかもしれないですね。」


 あー、なるほど。鍛えるついでに使ってみよう。魔力視を使った状態で自分が作った球を見ると、球の輪郭から魔力が漏れ出ているのがわかった。魔力を流すのを止めると生成した球が消えてしまうのは、単にコントロール出来てないだけというのも判明した。魔力を流すのを止めた後でも一瞬操作できたから間違いない。これを鍛えればいいのか。


「おお、少し良くなってきましたね。その調子でどんどん鍛えていってください。」




「雨宮様、服をお持ちしました。」


 それからしばらく魔力制御の訓練をしてると、コチョウさんが服を持ってきてくれた。


「あ、服ボロボロにしてしまってすいません。」


「いえ、大丈夫ですよ。あの程度であればいくらでも修復可能ですから。何度でもボロボロにしてもらって構いません。」


 いや、流石にそういう訳にはいかないでしょう。今後獣化を使う時は気を付けないと。鍛えていくうちに服の問題が解決するといいな。


「さて、では私は帰りますね。スキルレベルが10になったら連絡ください。それまでは教えられることがないので。」


 そういってレイアスさんは帰っていった。そして私たちも研究所を出て部屋に戻った。着替えてから戻ろうと思ったのだが、それはコチョウさんに止められた。なんでも狐の姿になれることをみんなに知っておいてもらったほうがいいとか。その方が城内での活動がしやすくなるとのこと。なので狐の姿のままお城の中を歩いていった。もちろん色々な人から好奇の目で見られるし、声をかけてくるひともたくさんいたが、その度にコチョウさんが説明してくれた。毎回毎回めんどくさいだろうにと思ってたけど、コチョウさんは心なしか嬉しそうにしてた。


 そして部屋に戻り、コチョウさんにブラッシングしてもらってから人に戻った。ブラッシングはめっちゃ気持ちよく、コチョウさんもモフれるということでお城にいるときは毎晩やることになった。いまの時間は16時と中途半端だったので、とりあえず今日はこのまま部屋の中で魔力制御の訓練をすることにした。




【side-アベノセイメイ-】


 まさかあの神託が本物だとは思わなかったわ。いつもの妖精のいたずらかと思ったもの。それにしてはやけに凝った内容だったからその通りにしたんだけどね。まぁ、平和すぎてすることがなかったってのもあるのだけど。そうすると救世軍とか魔王討伐とかも本当のことなのでしょうね。3か月後に来るという異世界からの来訪者。彼らはこの世界では死なない身体を持つらしいですから、気を付けないといけませんね。ただ、同じ世界から来たという雨宮さんは別みたいなんですけど、それは何故なんでしょうか?


 コンコン


、言われた方をお連れしました。」


「どうぞ、入ってください。」


 っとそういえば今日は雨宮さんに関する報告会でしたね。私がセットしたのを忘れてました。コチョウがドアをあけ、その後ろからアデルと・・・レイアス?ラインでなくて?


「あらレイアス。あなたが出てくるなんて珍しいわね。ラインになにかあったのかしら?」


「お久しぶりです陛下。えぇ、雨宮さんがスキルの検証中に意図せず裸になってしまうという事故があったのですが、ラインはそれを指摘することもなくそのまま検証を続けてたましたので、ラインの代わりに私が担当することにしました。ラインには研究所の資料室整理の仕事をさせてます。」


「あら、そうなの。まぁいいわ。彼に対する処遇はあなたに任せるわ。それで、昨日今日と彼女を見てもらったのだけど、どうかしら?」


「じゃぁ俺から。昨日手合わせしたがかなり戦いなれてるっていう印象だな。指の骨が折れてもそれをおくびにも出さずに追撃してきたからな。技術だけなら既にうちの副団長とため張れるかもな。あとはレベルさえ上げれば強くなるだろうさ」


 なるほど、私が診たとおりね。彼女が持つ生命力は日常的に鍛えている人のそれだったもの。


「そう、それは期待できるわね。レイアスから見てどうかしら?」


「魔法に関しては初心者ですね。魔法に馴染みがない人っていう印象です。魔力制御のスキルレベルもまだ1でしたからね。多分、彼女がいた世界には魔法っていう概念がなかったんじゃないですか?ただ、彼女が扱うのは妖術っていう文献にしか存在しない魔法なのでいつもの基準で考えていいのかはわからないですけど。」


 力強い生命力を持つ割りには魔力が乱れてるとは思ってたのですが、それなら納得ですね。むしろこの短期間であれだけ順応してるのは凄いですね。英雄召喚というだけのことはありますね。


「あら、妖術も基本は魔法と同じよ。魔法と異なるのは一部の種族にしか扱えないということと、使える妖術は人によって異なるという点ね。その分、最初から強力な魔法を扱えるのが妖術の特徴よ。血統魔法の一つだと思ってくれればいいわ。あれも鍛えずとも本能的に扱えるものだから。」


「あー、そういうことですか。ってなんで私より年下の陛下が知ってるんです?私陛下の師匠なんですけど?」


「ふふっ、王族にしか見れない秘密の文献があるのよ」


 本当は彼女を私の固有魔法で診たからなんですけどね。それは教えないけど。


「むぅ、なんか納得いかないです・・・」


「最後にコチョウから見てどうかしら?」


「そうですね。私もアデルさんと同じくかなり鍛えているなという印象ですね。仕事柄お風呂で身体を流させてもらうのですが、とても引き締まった身体でしたし。それと身体中に切り傷が残ったので、刃が付いた武器でのやり取りを結構繰り返してるんじゃないですかね?かなり深い傷跡もいくつか残ってましたし。」


「私も雨宮さんの身体をちらっと見てしまいましたけど、確かにやたらと傷跡があった気がしますね。」


「ほう、したら今度は刃が付いた武器でやろうか。この間はなんていうか真剣味がなかったというか、色々試してる感じだったからなぁ。」


「アデルさん、それはご勘弁ください・・・。それなら普通に魔物と戦わせた方がましかと」


「そうね、アデルが刃のついた武器を持つと何故か加減しなくなるからね。あなたはダメ。せめて彼女のレベルが100になってからにしなさい」


「そっかぁ、そしたら魔の森に突っ込ませてパワーレベリングするかぁ。」


アデル?やめなさい


「うっ、あぁ、ええっと・・・承知しました。」


「よろしい。さて、これで今日の報告会は以上よ。今日は突発だったから口頭でのやりとりだけど、今後は書類の提出もお願いね。週1で行うから忘れずに。」


「「「はっ!」」」


 そして彼らは部屋を出ていった。


 ふぅ・・・久しぶりに会議らしい会議をしたわ。私が王の座についてから何十年も平和だったから本当に暇だったのだけど、やっと面白そうなことが出て来たわ。今後が楽しみね。


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SLAWOーあなたが選んだ種族はスキルを使用できません!みんなゲームしてるのに私だけ鍛練から始まりますー 雪乃大福 @naritarou_sinnabe

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