さよならを忘れて
@chauchau
片道切符握りしめ
「来ちゃった」
この世で誰よりも愛しい女性が魅力を振り回す。
彼女の愛を享受する。それだけで世界が輝きを取り戻す。そのことが分かっていても、馬鹿な男と蔑まれても。
「僕たち、別れましたよね」
「それなんだけど」
乱れることのない彼女の笑顔が愛おしく、狂おしい。
聞き慣れない言語を話す黒髪乙女の乱入に、自由を愛する御国の生徒たちと言えどもざわつきを隠せなかった。
「考えて、考えて、考えた結果」
転勤だった。
親の仕事だ。子どもの僕たちに出来ることなどありはしない。いつ帰れるかもわからない。それも海外だ。日本のどこかへ行くなんて話じゃない。遠距離恋愛にだって程度がある。僕の都合に彼女を巻き込むわけにはいかなかった。
だから。別れた。
告げたんだ。さよならを。
「さよならを! 忘れることにしました!!」
「そ」
「言わせないねッ!」
飛びつき、唇を奪ってきた彼女の行動に、一瞬で諸々を理解した同級生たちがパーティー開始を告げる雄たけびをあげた。
さよならを忘れて @chauchau
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます