最終回 パワードスーツおっさんと魔女
王都の復興は、着々と進んでいる。
オレも再びパワード・スーツに身を包んで、ガレキや木材を運ぶ。
「モモチ、こっちは大丈夫だ」
「お疲れ様でした、モモチ様」
ジーンとフローレンスが、オレをねぎらってくれた。
「スーツは、もういいのか?」
オレの着ているパワードスーツを、ジーンが指差す。
「ああ。急ごしらえだが、新調した」
ジェンシャンナイト・シェリダンは、新しく生まれ変わった。
オレも作成に加わって、よりヒロイックなデザインにしてある。基本的なデザインや性能は、あまり以前とは変わらないが。出力は極力下げて、持続時間を増やしてある。そっちもおいおい上げていく予定ではあるが、今は考えていない。
本当は、スーツは作らないでおこうかと考えたことがあった。スーツがあるせいで、魔族たちがより強くなってしまうのを恐れたからである。
だが、「シェリダンは『世界の守護神』という印象がある」と、フローレンスから背中を押された。復興に役立ててくれたら、戦闘以外のイメージも濃くなるのでは、ともアドバイスを受けている。
ジーンもオレがパワードスーツ姿でないと、見分けがつかないらしい。平凡な顔で悪かったな。
「今のところ、魔族が活性化したという情報はない」
聞けば、魔王はミルドレットだけではないそうだ。まだまだ戦いは終わらないだろう。
「いいさ。また魔族が人間を襲うのなら、オレが立ち向かうまでさ」
「だよね!」
ニョンゴも、フヨフヨとオレの周りを漂いながら賛同した。
「見ててよね。もっと強いパワードスーツを開発するんだから!」
「頼もしいよ。まったく」
ライコネンへ戻ると、珍客が。
「これ、ワイバーンの足です。唐揚げにするとおいしいですよ」
「ありがとうですわ! こちらは魔界で採れた甘い果実ですわ! 栄養価も高い完全食ですわ。お召し上がりになって!」
なぜか、レクシーと魔王の娘マーゴットが、仲良くなっていた。
「あー奥さん、これは魔族共の戦闘データとダンジョンの地図、ええ素材が取れそうなモンスターの図鑑や。旦那が帰ってきたら渡したってや」
「まあ。タキさん、ありがとうございます」
「かまへん。しょーもないパワードスーツと戦っても、おもろないさかい」
タキも、レクシーと仲良く話している。
「なんだよ。人の嫁に色目を使いやがって」
「アホか。ワシはマーゴット一筋や。人様のヨメに手なんか出すかいな」
レクシーからパッと離れて、タキはマーゴットの側へ。
「前回は遅れを取りましたが、今回はそうはいきませんわ! 必ず、世界はタキがいただきますので!」
「そういうこっちゃ。せいぜいきばるんやな!」
タキは、自分のバイクにマーゴットを乗せてタンデムで帰っていった。
「さて、昼にしようか、レクシー」
「はいモモチ。食べ終わったら、また採取ですか?」
「おう。ちゃんと土産は手に入れてくるからな」
「いいんですよ。モモチが楽しそうなら、なによりです」
食事を終えて、オレはタキがくれた地図と図鑑を持ってダンジョンへ。
「ヒャー! 素材よこせやーっ!」
(完)
転生特撮ヲタ、異世界でダークエルフの霊にそそのかされてパワードスーツの開発をして、世界を救うことに。俺は特撮フィギュアが作りたいだけなのに。 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます