リテラ転生

第73話 リテラは昇天する

(…………)

(ツルテンツルテン、デンデンモジャリン)


「うわぁ…… なんちゅーもん晒してるんすか。しかも大賢者ともあろうお方が、こんな見習い風情を晒して…… 悲しいっす」

「見習いさんなんですね。見習いさんは、『ボカン』としてるんですねぇ♪」


 …………

 こいつは……

 これは死者に対する冒涜なんだろうか?

 しかも、なにもできない、反論できないのをいいことに……

 俺はな…… 俺のはな…… 見習いだなんてとんでもない。こういうのはお上品というものだ。それにな、俺のは膨張率にステータスを全振りしてんだよ!


(…… 早く賢者様を生き返らせるの)


 アクリスや…… そう、早く生き返らせてくれればよかったんだ。俺は、ローブにしか魔法を仕込んでなかった。

 お前焦ってくれてたのか? 少しだけ解除すりゃいいものを、あまねく、端々まで、無かったことにしてくれるなんて。

 それとも、なんだ。生き返らせるということは、何か? 生まれたままの姿でいるべきとか、なんか儀式的なそういうあれでもあんのか? そういうもんなのか?


「死体っていうのが、なんとまぁ。晒してるくせに堂々と、隠す気もさらさらないっす。しかもなんかこう萎びてるというかなんか、嘆き叫んでるような、同情でも集めたいんすかね。このイチモツは。非常に、非情に、非浄に、悪質極まりないっすよ」

「キュリオちゃんは『ボカン』はお嫌いなんですかぁ?」

(…… んー、早くして欲しいの!)


 チャリスは、なにやら杖をかざし始めて、俺の息子の上でなにやら、黒いモヤモヤを発生させていっている……

 …… ん、あれ? チャリスさん? 俺の、俺の俺の俺…… 歪んでる? これってどうなってんの? もぎられてんの? かき消されてるの? それとも、半分は優しさ的なやつなの?


「おぉ、なんすかそれ! 異様っすね! 人類が変えてこれなかった欲望の叡智に変革を巻き起こしてるようっすよ!」

「かわいい『ボカン』を、もっと魅力的にしてみましたよぉ〜」

(…… 賢者様が連れてかれるの)


 もう、どうなってんだ、これ……

 なんなんだ、クリスタルになったり、股間ダークマターみたいになったり……

 もはや、いややはり、俺はこの世界にもう必要ないのかも……

 あぁ…… なんだ、なんか楽になる。

 引っ張られる力が……


「もぉ、分かってるっすよ、アクリっち。引っ張らないで。とりあえずもう大丈夫でしょう。今度こそ、蘇生させるっすよ!」

(…………)


 キュリオは、俺の目の前、いや目下? 胸の上に光の螺旋構造を展開し、辺りは光に包まれていく。

 ん…… んぁ、これが、これが生き返る感覚なんだろうか。

 あー…… 引っ張られる。なんか、圧が。ジェットコースター並みに上昇しているような感覚さえ覚えるよ。

 なんだか、みんなの声も小さくなって、く…… ん、小さくなってる?


 ………………


「―― きたきたきたぁーーー!!! やーーーぁっと、やっと、釣り上げられたわよー!」


 ん? ポスっと? あいつらの声…… じゃない?

 俺は、目を開けて辺りを見回すと、一面には真っ白な世界が広がっていた。

 懐かしく、見覚えのあるような、ここは……


「よーぅこそ、死後の世界へ。転生勇者リテラ…… いやいや、そんなのいいわね! ま・ち・わ・び・た・わ! この詐欺師! いえ、転生詐欺師よ! アンタなんて!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大賢者はなぜ死んでいる!? ボソボソさん @bosobosonovel

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ