私は《探偵》をずっと探してた。
「誰だ!」
中性声はそのもう一人にそう言い放つ。
「君に用はない。私の目的はその《探偵》だ」
「生憎、ボクも目的はその《探偵》だ」
どちらも俺と同い年くらいの少女。中性声のボクっ娘は扉から、もう一人は上の窓から、中に侵入してきていた。しかも、もう一人の方はスナイパーライフルを背負っていた。
探偵とは俺の事を指しているのだろうが、何で俺なんだか、意味が分からない。
その瞬間、他の四人が一斉に倒れた。どうやら、侵入者の二人が気を失わせたようだった。
「君が拾った本。あれは未来予知の本。君の予想通り……ね?」
窓から入って来た方の女子がそう話し始めた。
何で俺が本を拾ったことを知ってるんだ……?
「その本には表と裏の二冊があって、君が拾ったのは表。表は真実を一部だけ書く不良品。裏は、未来に起こることのいくつかを書く。私はそれを見てここに来た」
なるほど……とはならなさそうだが、とりあえずそういうものだと理解しておいた。
その子によると、裏本には『〇月×日、夜。月光の館にて殺人ゲームが行われ、一人が死ぬ。そこに《探偵》が現れ、解決する。なお、探偵は表本を持つ』と書かれていたらしい。
まさか、まだ続きがあったとは思わなかった。
「私は《
少女は力強くそう言う。
「この世界には異能力を持つ者が存在する。そして、異能力者を狙う組織も存在する。彼らは、実験対象として、その異能力者を狙っている。君もその異能力者の一人で、能力は《探偵》」
表に出ない裏の組織といったところか。この社会は、表に出ない部分が多い。それ故に、そんな
「そして、君はその組織の幹部だね? フェルノ」
中性声に向かって少女はそう言い放つ。
「と、いうことは……」
「逃げるよ、《探偵》」
そして少女は俺の手を引き、屋敷の奥に向かって行った。
「追え!」
フェルノは部下たちにそう指示をする。それと同時に、男たちが俺たちの事を追いかけて来る。
窓から外に出て、山を下り、街中に出る。
「免許は?」
「あるわけないだろ」
「じゃあ、射撃経験は?」
「
何をするつもりだ。
「バイク運転頼んだ」
「え……!?」
少女はそう言ってあるバイクを指さした。
「大丈夫。あれは私の持ち物だから」
「そういう問題じゃない。無免許運転だぞ」
「じゃあ、銃使う?」
「……運転します」
俺と少女はバイクに乗り込んだ。少女は後ろを向いて乗り、ベルトで俺の腰と自分の腰を一緒に縛った。何でこんな状況になっているんだか……そんなことも言ってられないか。
俺は気持ちを切り替えてエンジンをかける。
「ナビ通りに行ってもらえればいいから」
少女がそう言うと、ハンドル部分についていた小さなモニターが点灯し、道案内を始めた。
初めてでもセンスはあるらしく、それなりに運転はできた。
ここから俺たちはカーチェイスを繰り広げる。
そして、少女はライフルで追ってくる敵を次々に撃ち抜いていく。
ライフルの形状的に、そのライフルは永井を撃ち抜いたものに近い。というか、こんな大きなものを持ち歩いているわけもない。樹の上にいた奴から奪ってきたか、この少女が犯人か。前者だと信じたいが。
少女の狙撃技術は素晴らしいもので、百発百中と言っていいほどのものだった。
あっという間に追ってくる敵はいなくなり、目的地にも着いた。
「ありがとね、運転。銃弾持ってきておいてよかった」
バイクを降りると、少女は俺に向けての一言と独り言を漏らした。
「ここは……?」
「私のアジト」
「え……」
地下空間に広がる無機質な世界。ここが、この少女のアジト。
「名前言ってなかったね。私はモカ。君は、ライト……だっけ?」
「それは偽名で……本名は、佐光星樹」
「へぇ……この世界では軽はずみに本名を名乗ったらダメだからね、ライト」
「は、はい……」
何で俺は初対面の少女に怒られないといけないんだ。
「とにかく、君には仲間になってもらう」
「え……!?」
急すぎないか……?
「さっき言った、異能力者を狙う組織。その組織を潰すことが、私の目的。だから、敵に異能力者を渡さないようにこうやって集めてるの。君にはその手伝いをしてもらう。いいね?」
「え……」
どうやら、拒否権は無いようだった。
そこに《探偵》が現れ、解決する。 月影澪央 @reo_neko
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