第2話 心透化病

 学校で倒れてしまってから数時間後、午後三時頃に僕はベットの上で目を覚ました。周りを見渡すと保健室の先生が駆けつけているのに僕の両親は病室に来てくれなかった。息子が倒れたんだったら普通は来てくれるだろ。両新どっちも共働きで、仕事が忙しいのはわかるが来てほしかった。


「鳴海君、目を覚ましたのね。」

「はい、先生。僕の体どうなってしまったんですか?」

「私は一応鳴海君の症状について聞いたんだけど、とりあえず先生を呼んでくるわね。」


今僕自身は体が痛いとかはないが、何か体がフワフワしてて心にぽっくり穴が開いてるみたいで、何かとても変な感じだ。起き上がるのはよくないと思い、ベットで横たわっていながら先生を待った。


ガラガラガラ


「鳴海君、初めまして。君を担当することになった、久木田山くきたやまです。よろしくね。」

「お願いします。先生、僕の病気って何ですか?」

「鳴海君…。君の病気は心透化病しんとうかびょうっていうものなんだ。」

「先生その心透化病って何ですか?」

「心透化病っていうのは、心臓がレントゲンとかで撮っても映らなくて心が透けているみたいだからそう呼ばれている。致死率3%。とても低い確率だが、今の医療技術じゃ治療治療できない難病なんだ。」


難病か。死ぬ確率が低いとしても死ぬのは怖い。しかも治すことができないのか。

『死』という日常とは離れた言葉によって乱れた心臓をなんとか落ち着かせ、先生に質問する。


「そうなんですか。でも死ぬ確率が低くてよかったです…。症状とかは何がありますか?」

「症状はまず、免疫力の低下、体力の低下、どうき、息切れなどがある。」

「今後どうしたらいいですかね。」

「今日、一日入院してもらって、良さそうだったら明日には退院してもらう。でも、二週間に一回程度病院には来てね。定期観察ってことで。」

「先生質問いいですか?」

「なんだい?」

「僕と同じ心透化病の患者ってこの病院にいるんですか?」

「えっ、いるはいるけど名前は教えられないよ?」

「いるんですね。わかりました。」

「名前は言えないけど、君と同じ同い年だよ。」

「同い年、か。」

「もう、質問はないかい?」

「はい。ありません。」

「じゃあ、また明日ね。歩いても大丈夫だから、病院回ってもいいからね。」


先生が病室から出ていく。保健室の先生はまだここにいるみたいだ。


「せっかくだから息抜きに談話スペースにでも行って来たら?私も鳴海君が帰ってきたら学校に戻るから。」

「そうですね。ちょっとだけ行ってきます。」


ベットから立ち、病室のドアを開け外へ出る。

病院は広く4階建てで僕の病室は2階にある。3,4階も病室が並び、各階それぞれに談話スペースがある。談話スペースには小説や漫画などの本やテレビなどがあり、椅子やソファーなど座れる場所がある。僕はソファーに腰を下ろすと、そこにあった本を適当にとった。本を読みながら病気のことを考えた。

(なんで僕なんだろう…。)

この心透化病は400万人に1人しかかからない難病だ。なぜそんな低い確率を引いてしまったのかと自分を責めてしまう。。


「はぁ。」

「隣座っていいですか?」

「あ、はい。」


ふと、良い香りがして顔を上げれば私服姿の女性が座っていた。何か僕とは少し違う雰囲気を持っている彼女はかわいくて美しかった。見た感じ、同い年ぐらいだろう。


「どうかしましたか?」

「あ、い、いやごめんなさい。何でもないです。」

「お名前はなんていうんですか?」

「西島鳴海です。」

「高校一年生ですか?」

「そうですけど、」

「同い年!鳴海君はその小説好きなの?」

「え、あ、はい。」

「その話の内容感動するよね。」

「そ、そうですよね。」


嘘をついてしまった。この本なんかに興味なんて全然ないのに。

彼女の雰囲気に押されてしまった。


「鳴海君はなんでこの病院にいるの?」

「ぼ、僕今日午前中倒れてしまって。それで、医師から心透化病っていわれて。」

「そうなんだ…。同じだね。」

「え?」

「あ、もう時間だ。また会えたらいいね!じゃあね!」

「あ、あの!お名前はなんていうんですか?」

白雪透音しらゆきともね、だよ。じゃあね。」


彼女は本を一冊手に取って談話スペースを後にした。


「しらゆき…。かわいかったなぁ。」


彼女にまた会えたらいいなと僕は思った。

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君の心は透明だった。 超神星「ちょうしんせい」 @okurumi

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