死神狩り

次の仕事は僕一人でやれとのことだ。

今回の依頼主は病気のせいでベッドで寝ているだけの生活を送っている女の子だ。

歳は十五、一日の大半をベッドで過ごしている人生に意味を感じない 家族や病院の人達に迷惑をかけ続けるくらいなら死にたいとのことだ。

今回の理由もどうしようもないものだ。

今日はその子の家に実際に足を運び、死に方と日時を決める。

その子には一日中専属の医者や親がついているため堂々と動けない。

そこで僕はアラヤに偽の名刺を作ってもらった。

この子の親は我が子を思い一週間に一回カウンセラーの人を家に招き子供の悩みを一対一で聞いてもらうそうだ。

今回はそれを利用させてもらう。

今の僕はカウンセリングの先生ということにっている。

家の前に着いた。

大丈夫だ、アラヤとカウンセラーっぽい話し方や立ち振る舞いを練習したじゃないか。

緊張しながらもインターフォンを鳴らした。

中から女性の返事が聞こえる。

ガチャ

ドアが開き母親らしき人が出迎えてくれた。

「どうも、わたくしカウンセラーの佐々木と申します。今回はよろしくお願いします。」

丁寧にあいさつを済ませる。

女性はにこっと微笑み僕を家の中に挙げてくれた。

今のところ僕はカウンセラーになり切れているようだ。

娘と話す前に母親にいくつか注意事項を聞かされた。

まず、娘の心拍が上がるような話は避けること、ベッドから立ち上がりたいといったときは手を貸す、だが絶対に息が上がるようなことはしないこと、もし苦しそうにし始めたらすぐにベッド付近にあるボタンを押して医者に伝えることなを徹底しろと言われた。

もちろん笑顔で了承した。

とうとう依頼主との対面だ。

女の子の部屋に入りドアが閉まる。

母親が階段を下りていく音がはっきりと聞こえた。

部屋のベッドにはかわいらしい女の子が寝転がっている。

黒髪ショート、肌は白く体形もいい。

見た目は健康そのものだ。

しいて言うなら胸がない。

そんなことを考えていると彼女のほうから僕に話しかけてきた。

「あなたが死神さん?」

ちいさな声で聞いてきた。

死神だとばれないように気を使ってくれたのだろう。

よくできた子だ。

「そうだよ 僕は死神のカイ 十七歳 今はカウンセラーの佐々木ってことになってる。僕を呼ぶときは佐々木って呼んで。」

彼女に合わせて僕も小さめの声でそっと返した。

彼女はニコッとわらった。

なんでも年齢が同じくらいの異性と話すのは初めてだそうだ。

最初は本当にカウンセリングしにきたみたいに彼女の悩みを聞いたり、流行っているアニメやゲームの話などをした。

友達と話しているようで楽しかった。

三十分くらいしたころから日時と場所、死に方を話し合おうとした。

その時ドアをたたく音がした。

危なかった このまま死に方の話とかしてたらさすがにまずかった。

部屋の中に母親が少し申し訳なさそうな顔をして入ってきた。

それから僕に母親が話す。

「今警察の方が来ていまして。なんでも娘に用があるらしいんです。先生もいてよいそうなのでこの部屋に入れても大丈夫ですか?」

警察?警察がこの子に何の用だろうか。

まあ断る理由は無い。

大丈夫だと伝える。

一分くらいして部屋にスーツを着たがたいのいい男が入ってきた。

見れば分かる、かなり強い。

その男は僕たちに話してきた。

「お二人の邪魔をして申し訳ない、私は警察の王鳥 零(おうちょう れい )と申します。」

えらく珍しい名前だなと思いながらも相手が名乗ったのだ、こちらも名のらねばと思い自己紹介をする。

「カウンセラーの佐々木と申します。警察の方がどのようなご用件でしょうか?」

カウンセラーっぽいあいさつ成功! 完璧だ

王鳥さんは説明を始める。

「近年この国では自殺をする人が増えています。さらに自殺を手伝う死神も増えています。私は警察の中でも自殺を止めたり、死神を捕まえることを専門に行っています。あなたのように病気で家や病院からあまり出られないという人で自殺する人が結構います。それを手伝おうとする死神たちもね。なので重い病気を持っている子の家に足を運び自殺しないように呼び掛けているんです。」

王鳥さんの言葉を聞いた瞬間心臓の鼓動が速くなる。

タイミング考えろよ。

俺らもろじゃん!

実はもうバレてまーすとかないよな?

落ち着け、焦るとぼろが出る。

平然と笑顔で接するんだ。

「警察の方は大変なんですね 大丈夫ですよ、この子は自殺するような子ではありません。」

堂々と言い切る もちろん嘘である。

王鳥さんはこちらを見て少し笑った

「そうですか、実際彼女と話したあなたが言うのであれば間違いはないのでしょう。それでは私はこれで失礼します。ほかの家にもいかないといけないので。」

そう言うと彼は足早に部屋を去っていった。

思わず大きく息を吐く。

生きた心地がしなかった。

彼女も僕と同じだろう かなり険しい顔をしている。

できれば日時を決めたいところだが、彼女がそれどころではなさそうなので今日はいったん帰ることにした。

マンションに帰った僕にルカやアラヤは初一人仕事の感想を聞いてきた。

三十分アニメやゲームの話をしただけだと言うと二人はやはり煽ってきた。

そうだよね、家に行って日時と死に方を行くだけの簡単な仕事。

失敗するほうが難しい。

てかルカが失敗したら僕だって煽る。

だがある男の名前を出した途端ルカたちは笑うのをやめた

「邪魔が入ったんだよ 王鳥 零っていう警察の人なんだけど知ってる?」

二人は今までにないほど真面目な顔をしている。

彼は今まで死神たちを何人も逮捕もしくは殺しているらしい。

やはりかなり強いようだ、僕たちの中で一番強いリンが本気を出していい勝負だそうだ。

本当にバレなくてよかった。

バレてたら今頃牢屋の中にいたか死んでた。

みんなで話し合った結果この仕事は僕たち全員で最大限の注意を払って行うことにした。

依頼主の自殺の決行も一か月遅らせることにした。

それほどに警戒すべき男 王鳥 零 どれほどのものなのか もし戦うことになったらどうなってしまうのか。

考えることができなかった。












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死にたがりだった僕は死神ちゃんと死を運ぶ ノリ餅 @Norimoti

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