第四の壁を突破している公爵令嬢の婚約破棄物語‐この作者、婚約破棄物語とか全く知らないんですけど、本当に大丈夫ですの?‐
福朗
いったいこの作者は何を考えていますの?
「レイチェル! 君との婚約は破棄させてもらう!」
ほーら始まりましたわ。夜の22時半に馬鹿作者が、弾四の壁を突破できる主人公がいたら面白いけどなあ。でも最強すぎて短編でしか無理か。諦めよ。とかSNSに書いた癖に、そうだ、戦いとは関係ない令嬢ものなら? とか思いついたせいでこのざまですわ。カード世界が完結したと思ったらすーぐこれ。もう馬鹿かと。しかもタグに主人公最強とか書いてる辺り、戦闘描写に未練タラタラなのは丸わかり。
「聞いているのかレイチェル!」
「はいマクシミリアン様」
申し遅れました。私、レイチェル・オーモンドと申します。馬鹿作者に生み出された公爵令嬢で、現在王太子であらせられるマクシミリアン様から婚約破棄を突き付けられてますの。え? 自分が作品の登場人物と自覚してSAN値は大丈夫? この作者、しょっちゅうキャラが勝手に動き回っていますので、その辺りは特に気にしておりません。筋肉とか筋肉とか筋肉は完全に作者の手を離れているようなので。
「婚約破棄だ!」
「はいマクシミリアン様」
最大の問題はこの馬鹿作者、本当に一度も、いわゆる婚約破棄ものを読んだことがない有様で、婚約破棄ってそもそもどこでするんだ? といきなり第四の壁を突破していると謳っておきながら設定の壁にぶち当たり、現在の私は王太子殿下出席のパーティーで婚約破棄を突き付けられていますの。多分そんな感じとかなんとか。あやふやすぎ。その多分そんな感じで、うちのお父様は顔を真っ赤にして怒っているのですけど、満座の席で恥かかされるとか戦争じゃないのかしら? この作者の傾向って、貴族の面子は命より重い。って感じなのに。
「それでどなたとご婚約を?」
金髪碧眼のイケメンであらせられるマクシミリアン様に問う。そういえば私の容姿の説明もしなければ。まあ、レイチェルっぽい貴族のご令嬢の姿を想像していただいたらいいですわ。この作者が私の名前を決める際に、お貴族のご令嬢なんだから、とりあえずレイチェル。とバカみたいなことを思ってましたので。
話が逸れました。婚約破棄と新たな女狐役の登場はセット……なのですわよね? いや、マジのガチで本当に分かってないみたいですけれど。
「俺はソフィアと結婚するのだ!」
「で、殿下……あの、その……」
マクシミリアン様が連れ出した純朴そうな赤毛の少女、子爵家の令嬢であるソフィアが怯えた表情です。まあそれもそうでしょう。多分側室でなんとか? と考えていたでしょうに、いきなり公爵令嬢の婚約破棄の後に連れられたせいで、貴族達の好奇の視線を一身に浴び、御父上に至っては心臓を押さえて倒れそうになっている。ここにも新たな胃痛者が……お可哀想に。あ、この作品なら顔文字使っても大丈夫だなと作者が思いつきましたわ。実際、MMMORPGでしょっちゅう顔文字使っている作者ですから、フラストレーションが溜まっていたようでして、うざいのは分かるけれど止められないとかなんとか。とにかくそれでは早速。
可哀曹(:_;)
「俺は真の愛に目覚めたのだ!」
真の……ヒロイン追放……うっ頭が……私がアニメ化の際には、必ずヒロインはレイチェル。と念を押してもらわねば。ヒロインの椅子は誰にも渡しませんわ。ええ決して。
とにかくその真実の愛宣言、国王陛下は泡噴いておられますけど。なんなら他の貴族達からも、宮廷政治と政略結婚も分からない奴が次の王とか大丈夫か? とも思われていますわよ。いえ、大丈夫どころかヤバくない? って感じですわね。実際かなりヤバいでしょう。
「帰るぞレイチェル!」
おおっといけませんわね。お父様が、子爵如きの娘を選ぶためにこの満座の席で婚約破棄したのかぷんすこしてますわ。これは帰った途端戦争でしょうね。そんな酷い理由で戦争とか、って観音寺騒動とかありましたわね。どんなにキャラが馬鹿やってそれを突っ込まれても、重臣を手打ちにして落ちぶれた六角義治という先例がいると言い張れる点では、非常にありがたい歴史の人物と言えるでしょう。ああ。ありがとうござます六角義治様。貴方のおかげでマクシミリアン様がやってる馬鹿も擁護できますの。
うん?
つまりマクシミリアン様は六角義治の転生者だった? いけない。異世界転生のタグを付けなければ怒られてしまう可能性が微粒子レベルで存在していますわ。その点私は現地人ですので全く問題なし。証明完了。Q.E.Dですわ。
「レイチェル!」
おっと、六角義治様の素晴らしさを再確認しすぎていました。このままではタイトルが、血濡れの公爵令嬢、最前線でメイスを振るう。に変わってしまいますわ。そんな血生臭い物語ごめんですわ。
という訳で。
【物語変更】
◆
「レイチェル! 君との婚約は破棄させてもらう!」
お話は最初に戻り、またしても婚約破棄を突き付けられる私。
「俺はソフィアと結婚するのだ!」
「ああ殿下!」
「ぷ。憐れな」
「公爵令嬢ともあろうものが」
怯えていたソフィア嬢も殿下にひしっと抱き着き恋に浮かれ、周りも貴族も私に侮蔑の表情を隠そうともしない。
そうそうこれですわ。多分。恐らく。きっと。メイビー。
と言っても私が腹立ってきましたわね。
「マクシミリアン様」
「衛兵。こいつを摘まみだせ」
折角最後の挨拶をして差し上げましたのに、完全に無視されてしまいました。全くもう。私ぷんすこしておりますわよ。
「さようなら。永遠に」
ドレスの端を摘まんで、令嬢らしく丁寧に頭を下げる。
「なに?」
【物語変更】
マクシミリアン様は存在せず、代わりに超優秀な王太子が生み出され、別の公爵令嬢と結婚してめでたしめでたし。
◆
「今日は我が子、オリバーの婚約パーティーによく来てくれた」
国王陛下のお言葉ですが、実際に中世で王太子の婚約発表パーティーってあるものですの? ついでにその時の国王陛下ってどうされているのかしら? 教えて偉い人。ですわ。
そしてマクシミリアン様の代わりに生み出されたイケメン柔和王太子オリバー様と、聖女と謳われたご令嬢が仲睦まじいご様子で談笑されていますわ。
ああ読者の皆様。よく分かりますとも。これジャンルがホラーじゃん。でございましょう? 仰る通り。馬鹿作者が短編でしか無理だなと思った理由はこれでございます。文字を、物語を自由に書き換えられる存在だからこそ、主人公最強のタグがあるのであり、全く話を膨らますことができないのですよ。
まあそれでも、私の力が効かない主人公達の作品を書いているのがこの作者なので、ひょっとしたら無理矢理話を作り出すかもしれませんが。
それで結局なんで恋愛ジャンルにいるのか?
「麗しの君、どうかお名前を」
スーパーアルティメットウルトラパーフェクト美男子にお誘いを受けてしまったので、ドレスの端を摘まんでお辞儀する。
「レイチェルと申しますわ」
ほら、今そうなったでしょ?
第四の壁を突破している公爵令嬢の婚約破棄物語‐この作者、婚約破棄物語とか全く知らないんですけど、本当に大丈夫ですの?‐ 福朗 @fukuiti
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