第49話 謝罪とプレゼント

「すみません……」

 クラウは五体投地の勢いで土下座を行っていた。

 怒られて当たり前だ。

 納得しながらもエリーゼの言葉を聞いていた。



「私だってもう12歳、年頃の女の子なんですからね!」

 そういうエリーゼは顔を真っ赤にして頬を膨らませていた。

 ひたすら謝りつつも5年ぶりに会うエリーゼを見る。

 幼さが少し無くなり、背も伸び美しさも増していた。

 それとプレゼントした幸運のブローチもつけていてくれた。


 こんな同世代の女の子をずっと放置していたなんて前世の俺からしたらあり得ないのだが、領地経営の忙しさ、成長していく喜びと楽しさにかまけて居たのだ。



「エリーゼ様さえ良ければ、王都にいる半年間出来るだけ会う時間を作らせて頂きたいと思いますので」「当たり前です」

 家族にも呆れられていたのだから当然だが、俺の言葉に食い気味に被せるエリーゼ。



「私は形だけの婚約だとは思っていないのに……」

 そうボソッとつぶやくエリーゼを見て、出来るだけ一緒に居ようと思うクラウだった。



「エリーゼ様、こちらに」

 イオはその様子を見ながら椅子に案内する。

 ジュドー達も準備をしていたかのようにお茶を出す。


 お茶を飲み、沈黙するエリーゼ。

 何かいい言葉を掛けたいのだが、上手く言葉が出てこない。


 ふう、と一息つき、エリーゼはこちらを向く。


「改めて、お久しぶりですクラウ様」

 気持ちを切り替え言葉を掛けるエリーゼ。



「とてもお忙しく働いていたようで、素晴らしい事だと思いますわ。王都もその恩恵を受け大きく変わったでしょう?」


「ええ、とても綺麗になったと思います」


「今リシュテンはジャンダーク領を中心に大きく成長しております。王家としてとても感謝しておりますわ」

 そういうとエリーゼは頭を下げた。



「頭を上げてください!」


「感謝はきちんと伝えないと伝わりませんからね。で、固い話はここまでにしておいて」

 そういうとエリーゼは興奮したように話し始める。



「ジャンダーク家が開発した美容品はとても素晴らしいですわ! 私も愛用していますが、髪も以前とは比べ物にならない程サラサラしてますし、何より化粧品! あれは世の女性なら誰でも欲しがる品ですわ。実際王都では以前より女性の社会進出が増えて自ら働いてでも手に入れようとする方が沢山増えました。私のお気に入りはマニキュアで鮮やかなのに自然で、長持ちもしますし日々に彩りが出ましたわ!」

 とても熱く語り続けるエリーゼは、年頃の女の子の様なキラキラした笑顔で俺に伝えてくる。



「エリーゼ様は元々可愛かったのに、より美しくなりましたね」

 クラウがそういうと少し恥ずかしそうにする。



「これ良かったら貰っていただけませんか?」

 そういうとアイテムボックスからジャンダークで開発している新作の美容品を出す。



「まあ! これはどう使うものですの?」


「これはトリートメントと言って、髪を洗い終わった後に着ける物です。髪を拭いてからつけて、洗い流さずに使えます。エリーゼ様の髪は美しいですが、これで更に良い効果が出るはずですよ」

 そういうと恥ずかしそうに受け取ったエリーゼは、トリートメントの入った瓶を抱えて嬉しそうに「ありがとうございます」と笑いかけてきた。

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