第48話 王都到着
「んー?」
王都に着くなり違和感を覚えるクラウ。
前に来た時はとにかく発展していて人で混雑している印象だった。
そこは今も変わらない。
ただ、明らかに綺麗になっていた。
各所に混在していたゴミは明らかに数が減り、何より臭いが落ち着いている。
前に来た時は場所により糞尿の臭いもしていたはずの王都が、まるで別の街かのようだ。
「前はこんなもんかと納得してたけど、随分綺麗になってるな」
「それはクラウ様のお陰でもありますよ」
「俺?」
俺が関係しているといえば……水洗トイレの普及か?
「もちろんトイレの普及も大きいですね、どうしても一定以上の余裕がない家では手近な所に捨てる余裕しかありませんでしたし。 ただそれ以上に大きいのが真神教でしょうね」
真神教の広がりにより傷病者が減り、働き手が増えた。
それは同時に失業者が増える事を意味する。
人がとにかく多い王都ではその問題に対し衛生問題の解決に繋げた。
街の清掃員や下水周りの労働者をグンと増やすことで街の清潔と共に衛生面もぐっと向上したのだ。
今まではギルドで不人気依頼だった清掃系の仕事をしてくれる人々は、多少差別される事もあるようだが感謝する人々の方が圧倒的に多く受け入れられているようだった。
「そういう話を聞くと悪い気はしないな」
クラウは自分の行いが正しい方向に動いたことを喜ぶと同時に、民に寄りそう政策を行った王家に対して尊敬の念を抱いていた。
「まずは屋敷に向かいましょうか」
イオにそう言われ、懐かしの屋敷に向かうことにした。
屋敷に着くと相変わらず管理され、綺麗な状態であった。
入り口には出迎えてくれるメイドと執事ジュドーが居た。
「おかえりなさいませクラウ様」
「久しぶりジュドー、相変わらずで何よりだよ」
懐かしい顔を見てほっこりした。
短い時間であったが小さいクラウをよく世話してくれた。
子爵家の遣いであったがまるで自分の当主一家のように丁重に扱ってくれるジュドーはクラウにとって第2の祖父のようだった。
着いてまずは落ち着こうとリビングに座ると、準備していたメイドからお茶を貰う。
「テリエーヌ子爵に感謝しないとな、こんな家人を貸し出してくれて」
そういうと一様に不思議な顔をした後、コホンと咳ばらいをしたジュドーが声を掛けた。
「我々3人とこの屋敷は、正式にジャンダーク家の物になりましたよ?」
「へ?」
そう聞いてイオを見ると、呆れた顔をして説明してくれる。
「だから人の話はきちんと聞いてくれると嬉しいのですがね。 ジャンダーク家は伯爵となり、また事業の利益も相当増えました。 そこで今までお世話になっていたテリエーヌ家に今までの分を上乗せした額を支払い正式に我が家の持ち家となりました。 テリエーヌ家もまたそのまま優秀な家人を差し出してくださり、今もジュドー様達に管理してもらっているのです」
「あー……そうだったんだね」
これは後で説教を食らいそうだな、と少し落ち込むクラウだった。
「それでクラウ様、こちらでしばらくはどう過ごしなさいますか?」
「エリーゼ様と会いたいんだが、連絡はしてもらえる?」
「勿論連絡はさせていただきますが、必要か……」
「どういう事?」
クラウがそういうと家の扉がバタン!と大きな音を立て、人が飛び込んできた。
「クラウ様!!!!」
目の前にはエリーゼが明らかに怒った顔で仁王立ちしている。
「エリーゼ様!?」
「私達が婚約者になったのが5年前、そして今で会うのが3回目……ですね?」
イオにプラスしてエリーゼ様からも説教かな、これは……
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