第47話 満喫しよう

 今回の1番の目的は婚約者であるエリーゼ王女と会う事だが、自由を満喫することにした。

 一緒に向かうのはイオとリザのみ。


 ミラはしばらく会えないのが寂しいからとついて来ようとしていたが、すぐに諦めてくれた。

 半年の期間、簡単にやりたいことを思い浮かべると何個も出てくる。


 王都にあるダンジョンも気になる、踏破は出来ないだろうが楽しみだ。

 守護天使の情報も知りたい、というかこれはゼロに直接聞いたら解決する事か。


 それに母の実家であるテリエーヌ家にも顔を出してみたい。

 生まれて10年、まだ一度も顔合わせをしていない祖父達に挨拶をしたい。

 領の発展ばかり考えてた今までと違う、本当の意味でクラウとして生きていくために、自分の生活を充実させていこう。



 のんびりと馬車の外を眺めながら王都へ向かうクラウ達。

 リザは隣で熟睡中だ。


 このまま一緒に寝てもいいが、御者をしてくれているイオに話しかけた。



「イオ、疲れてないか?」


「大丈夫ですよ、クラウ様こそお暇してるんじゃないですか?」


「まあね、でも大切な時間だからありがたく過ごさせてもらうよ」

 激動の毎日を送っていた2人だからこそ、この何もない時間のありがたさを感じていた。


 勿論索敵は怠っていない。

 2人と1匹旅になると決まってからすぐに探知系のスキルは取っていた。

 横になっていようと発動していれば察知できるのだから、スキルというのはずるいものだ。

 イオは目視でも怠っていないため、そんな使い方をするのはクラウくらいだが。



「野宿先にでもついたら教えてくれ」

 俺はそういうとリザに体を預け目を閉じた。




「チュンチュン」ガシガシ


「いたっ、なんだよリザ」


「クラウ様、つきましたよ」

 手荒く起こされた時、外はもう夕方になりかけていた。

 川が近くにあり、視界は開けている。

 魔物や今では数少なくなった野盗達に奇襲されることもないだろう。



「さあさあ暗くなる前に準備いたしましょうか」

 アイテムボックス持ちであるクラウが野営道具なども持ち歩いているが、設置などはイオが手早く行ってくれる。

 成長と共に生意気な事もいうようになったが、基本は忠実な部下だ。


 順調に才能も伸び、手放せない優秀な部下となったイオはあっという間に設営を終え夕飯の準備を始めていた。



「しかしイオが料理も出来るようになるなんてなー」


「空いた時間にミシェルさんから教わってるんですよ」

 そういうと手慣れた手つきで食材を調理していく。

 イオは完璧人間でも目指しているのだろうか、少なくとも一家に一人欲しい人材だ。



「今日はせっかくの野営ですし、カレーにしました」

 オーク肉の使われたカレーが旨そうな香りを発していた。

 この世界では存在していなかったカレーだが香辛料の栽培も成功し、まず俺がミシェルに提案したのがカレーだった。

 様々なスパイスをブレンドし行きついた極上のカレーは、魔物肉という異世界要素を手に入れ前の世界より格段に向上する。


 そのカレーをダンジョン産米に掛ける。

 ダンジョンの恩恵を受けすぎて経済を破壊しないようにと思っていたが、米に関してはいくら探せど耳にしない。

 自分で使う分にはと、米を生み出していた。


 更にダンジョン産の恩恵なのか、稲を刈ると精米された白米がドロップするのだ。

 見た目は完全に稲の姿をしたモンスター?

 不思議な現象だがダンジョンだからと納得している。



「「いただきます!」」「チュン!」

 俺はこの世界で食べなれたオークカレーを一口、良質な米も合わさり思わず笑顔になる。

 自然豊かな場所でカレーを食べるとなんだかいつもの何倍も美味しく感じる。



「イオ、すごい旨い」


「ありがとうございます」

 俺が褒めると何事も無いように受け答えするイオだったが、うれしい時に拳がピクピクする癖を知っている。

 まったく素直じゃないんだからなーっとリザを見ると、顔を茶色くして一心不乱にカレーを食べていた。



「リザ、うまいか」


「チュン!」

 旨そうにひと際大きく鳴くリザ、後で顔洗ってやらなきゃな。

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