5話 嘘への執着

(ぇえ! まさか胡桃沢さんが同じクラスなんて。あぁ、これからもっと学校の楽しみが増えちゃうなぁー。あれ、でも転校生ならなんでこの前学校で会った時もこの学校の制服だったんだろ。それになんで名前までわかってたんだろ……)


 私は不思議に思いながらも後で本人に聞けば良いやと思い、とりあえず今は胡桃沢さんとどんな話をしようかを考えることにした。



 ◆◆◆◆◆



 ホームルームが終わり、クラスの皆が興味本位からか一斉に胡桃沢さんのもとへと向かった。私も胡桃沢さんに話をかけようとしたもののクラスの皆がいてゆっくり話せそうもなかったため私は廊下に出ていってしまった先生に石園が今日は休みなのか聞きに行くため、教室の扉を勢いよく開けた。その時。


「うわっ、びっくりした」


 私の目の前に遅刻してきた石園がいたのだ。危うくぶつかりそうであったがギリギリ私と石園がぶつからずに済んだ。


「もぉ、どうしたのそんな慌てて扉開けて。ほんとビックリしたよ」


 石園が痒そうに手をポリポリと掻かきながら言った。


「ごめん石園さん。まさかいるとは思わなくって。それよりどうしたの、珍しく遅刻なんてしちゃって」


「いやーちょっとね、寝坊しちゃって。起きたらもう8時半なんだもん、びっくりしちゃったよ。そ・れ・で・なんでそんなジロジロ見てるの? もしかして私のこと……好きなの?」


「ふぇ?」


 急に友達に「好きなの?」 と聞かれ私はつい変な声を出してしまった。確かに私は石園がずっと手をポリポリと手を掻いていることが気になって見ていたがまさか石園が気になる程見ていたとは思っていなかった。


「あっ、いや、別にそういう訳じゃにゃいんだけど」


(噛んだー……)


 私は咄嗟とっさに早口で言ったせいか変な風に噛んでしまった。


「そうにゃんですかー。それはじゃんにぇん。それじゃあにゃんで見てたのかにゃー?」


「あー! もうバカにしないでよ。」


 私は石園の肩をポカポカと叩いた。


「二ヒヒ。わかったよもうバカにしないからポカポカ叩かないで。まぁ、言いたいことはわかるよ、『腕をずっと掻いてるけどどうしたの?』でしょ? それはね、私アトピーが腕にあって痒いのよね。だから、ね、そういうこと。それじゃ教室入ろ。」


「あっ、ちょっと待って」


 私は石園が教室に入る前に呼び止め胡桃沢が転校生として来たと言う話をした。


「へー、胡桃沢さんが同じクラスなんて。しかも転校生で。なんかさ、変じゃない? だってこの前学校で桜木さん、胡桃沢さんに会ったんでしょ? もし仮に学校の案内だったりで学校に来てたりしたとしても桜木さんと自由に話せる時間なんてないだろうし。それに転校生を1人で学校に徘徊させるのはおかしいよ。あー、もう2人で話してもわかんないし、直接本人に聞きに行くよ」


 私は石園に手を引かれ教室に入った。



 ◆◆◆◆◆



 教室に入り真っ先に胡桃沢の元へと向かった。私は教室に入った途端手を離したものの、そのまま石園は胡桃沢の元へ向かい、まだ他のクラスメイトが胡桃沢と話しているにも関わらず「ちょっといい?」などと言い無理やり突っ込んでいった。それはまるで制御の効かなくなった暴走トラックのように。


 石園が何とか胡桃沢の元へ着き話しているとどうやら石園は困惑しているようだった。それで今度は石園が胡桃沢の手を引いてこちらの方に向かって来た。


「それじゃあ、彼女は。桜木さん。貴方仲良くしてたでしょ」


「だから分かりませんって。1度もこの学校に来ていないのに顔見知りの人なんている訳ないじゃないですか。それに腕ちぎれるのでそれ以上引っ張らないでください。貴方、ゴリラか何かですか」

「誰がゴリラじゃーこの記憶喪失ー」

「ちょっと。本当に学校に来てないのに記憶喪失も何もないじゃないですか。」


「えっ」


 私は言われたことに同様を隠せなかった。


(あんなに仲良くなれた胡桃沢さんがまさか私のことを覚えていないなんて。もしかしてあの時会った胡桃沢さんは別人ってこと? でも顔も体型も髪型も全部同じだし。そこの前学校で会った胡桃沢さんって……一体……)


(誰なの)

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ガラクタ世界〜決して信じてはいけない物語〜 サクラシオ @sakurasho

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