4話 私があなたを忘れたことはない
〈2032年4月29日〉
いつもの休日より早く起き、私は石園との待ち合わせ場所であるゲームセンターへと向かった。
ゲームセンターに着き私は辺りをキョロキョロと見渡し石園を探した。しかし、そこに石園の姿はなく、私は石園は遅れるのだろうと思いゲームセンターの入口の前で待つことにした。
(石園さんが遅れるなんて珍しいな。いつも遊びに行く時は誰よりも早く集合場所に来てたのに)
少し不思議に思いながらも私は10分、20分と待ち続け、流石に心配になり電話しようとしたその時、商店街の方からこちらに向かって石園が走って来ていた。
「ごめん、ごめん、遅れちゃって。結構待ったよね」
石園が私の目の前で止まり膝に手を当て息を荒くしながら言った。
「全然大丈夫なんだけど、石園さんこそ大丈夫? 髪もボサボサだし、目の下にくままでできてるけど」
「あぁ、大した事ないよ……。それより、今はゲームセンターで遊ぼ」
「うん……そうだね」
私は少し不安に思いながらも石園に言われるがままゲームセンターへと入った。
もし私がこの時、彼女を止めていれば……
◆◆◆◆◆
ゲームセンターに入り、私は石園とまたクレーンゲームなどで遊んだ。石園は、私が「これ可愛くない?」と言ったものを取り続け、いつの間にか手元には大量の景品があった。その様子に私の石園に対する不安はいつの間にか消えていた。
一通り遊び終え、私と石園はゲームセンターを出た。すると石園が、
「ねぇ、なんかちょっとお腹空いたからクレープでも食べに行かない? 商店街に新しくできたんだよね」
石園の問に私はもちろん「うん! 行こう」と応え私と石園は商店街へと向かうことにした。
商店街に入ってすぐ私は見覚えのある人を目にした。
「胡桃沢さん!」
私は駆け足で石園を置いて胡桃沢の元へと向かった。
「胡桃沢さん! 昨日ぶり。探してたよ、昨日の話ちゃんと聞こえなくてまた聞きたかったんだ。それで、昨日なんて言ったの?」
私は胡桃沢に餌に食いつく様に聞いた。
「えっ、えっ、ちょっ、待ってください」
胡桃沢はいきなり話しかけられたためかかなり混乱してしまった。
◆◆◆◆◆
「ごめんね、急に話かけちゃって。」
「いえ、大丈夫ですけど。なんで気づ――ここにいるんですか」
「たまたまそこにあるクレープでも食べようと思ってて」
「そう……なんですね……なら良かった」
「うん? なんか言った?」
「あっ、いえ、なんも言ってないですよ」
「そう……」
(なんか言った気がするけど気のせいかな)
私は胡桃沢に少し申し訳ないと思いながらも、私は昨日の話のこととついでに仲良くなりたいと思い胡桃沢に「もし良かったら私たちと一緒にクレープ食べない?」と誘った。
「まぁいいですけど昨日の話ならしませんよ。もう忘れてください。私も忘れるので」
「わかった……」
少し腑に落ちないものの私はそれならば仲良くなってまた聞こうと思い胡桃沢の手を引いてクレープ屋へと向かった。
(あれ、そういえば石園さんどこに行ったんだろ)
◆◆◆◆◆
クレープ屋の前に着きしばらくキョロキョロと石園がいないか辺りを見回していると。
「ごめん、ごめん、話終わった?」
トイレの方から石園が歩いて来ていた。
「もー、少し心配したよ」
「ごめんって、桜木さんに置いてかれたあとすぐトイレに行きたくなっちゃって。それじゃあクレープ食べよっか」
私と石園、胡桃沢はそれぞれ同じものを注文してベンチに座った。
「それじゃあ、いただきます!」
3人は同時にクレープにかぶりついた。
「美味しぃ」
私はこのクレープが石園と胡桃沢がいるおかげか今まで食べたクレープの何よりも美味しく感じた。
◆◆◆◆◆
「それじゃあ石園さん、胡桃沢さん、また学校で会おう」
商店街で遊んでいるといつの間にか夕方になり私たちは商店街の前で別れた。
「今日は楽しかったな。また学校行ったら胡桃沢さんと石園さんと一緒にまたどっか行きたいな」
◆◆◆◆◆
〈2032年5月6日〉
教室に着くと何か騒がしかった。特に男子がうるさく、遠くから話を聞いていると。「なぁ、どんな子が来るんだろうな」や「めっちゃ可愛かったらいいな」などまるで転校生が来るようにも思える会話だった。まさか入学式から1ヶ月程しか経っていないのに転校生が来る訳ないだろうと思いながらも少しドキドキしながらホームルームまで椅子に座っていた。
(はぁ……一体なんの話なんだろう。それに今日石園さん遅いな。もうホームルーム始まっちゃうよ)
「よし。それじゃあ全員席につけ」
予鈴がなり先生が号令をしたと同時に1人の見覚えのある女子が教室に入ってきた。
(えっ……)
「それじゃあ、自己紹介して」
「はい、私の名前は胡桃沢氷華って言います。これからよろしくお願いします」
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