3話 出会い

〈2032年4月28日〉


 高校生活が始まってからしばらく経ち、私はある程度学校に慣れ始め、今では男子にもある程度話せる様になっていた。石園とも入学式以来ずっと仲が良く、もはや親友の様になっていた。


 そんなある日、私が体育から教室に戻り石園と話していると男子が。


「桜木、廊下に呼ばれてるよ」


 と言い、私が誰かと尋ねると男子は分からないと言う。


「ごめん、石園さん。また後で話そ」


 私は石園との話を一旦切り上げ、廊下へと向かった。廊下には私の知らない子が立っていた。彼女は私よりも一回り小さく可愛らしい見た目をしていた。


「えっと、初めまして。なにか私に用があるの?」


 私が彼女にそう言うと。


「これ、登校する時に桜木さん落として行きましたよ。あと、私の名前は胡桃沢氷華くるみざわひょうかって言います。よろしくお願いします」


 彼女の手には入学式の日に石園さんが取ってくれたクマのキーホルダーがあった。


(あれ? さっきまでバックに付けてたと思うけど)


「えっと、それって本当に私の?」


「はい、裏に桜木さんの名前も書いてありますよ」


 彼女は裏を私に見せた。そこにはちゃんと私の名前が書かれていた。


(本当に私のだ。いつの間に落としてたのかな)


「わざわざ届けに来てくれてありがとう胡桃沢さん。それじゃあね」


 そして私はキーホルダーを受け取り、少し不思議がりながらも教室に戻ろうとしたその時。


「待ってください!」


 胡桃沢が突然大声を出し私の肩を引っ張り、あまり人の目につかない階段裏の掃除用具入れの裏に連れられた。


「すみません、急に引っ張っちゃって。どうしても桜木さんに話しておきたいことがあって。もちろん信じなくても良いです。こんなこと急に話されて信じる人なんていないですから。」


(えぇ、なんだろう。てか力強かったな)


 私は少し驚きながらも胡桃沢の話を聞くことにした。


「えっと、いつも桜木さんと話してる石園さんの事なんですけど。私見ちゃったんです。石園さんが―――るところを」


(えっ、ちょっ、聞こえなかった)


「ふぅー、それじゃあ私は言いたいこと言えたのでまたいつか会いましょう」


 一通り話を終えた胡桃沢は私を置いて走って行ってしまった。


「えっ、ちょっ、待ってよ! その話もう1回聞かせて!」


 私は胡桃沢を止めようとしたが彼女はそのままどこかへ行ってしまった。私はその後も胡桃沢を探したものの見つからず結局聞こえなかった部分が分からないまま教室へと戻った。


 席に座ると石園がこちらをじっと見つめ。


「ねぇ、なんかあった?」


「えっ! あっ、いや、なんにもないよ。ただ、この前石園さんが取ってくれたクマのキーホルダー登校した時落としてったよって届けてくれただけ」


「ふーん……ちょっと見せて」


 石園が私の手からキーホルダーを取り、まじまじとキーホルダーを見てから隅から隅までキーホルダーを触り始める。


「イタッ」


 キーホルダーを触っていた親指から突然血が出てきていた。キーホルダーの何かに刺さったのだろうか。


「えっ、大丈夫?」


「大丈夫、大丈夫」


 石園が自分のバックから絆創膏を取り出し親指につける。


「よし。それじゃあさっきの話の続きをしますか。それでどこに遊び行く?」


「うーん、それじゃあ駅前の商店街なんてどう? ゲームセンターも近いし」


「おっ良いね。じゃあそうしようか」


 明日の休みにどこに行くか決まり、私は明日が楽しみで仕方がなくなった。



 ◆◆◆◆◆



 〈●●●●年●月●日/深夜〉


「なに……これ……」


私の体の至るところに黒い大きな斑点が浮かび上がっていた。


「なにこれ、どうしよう、ママに言った方が良いのかな。それに、息が苦しい。どうしよう、どうしよう」


 私は数分感の苦痛の後突然頭がふわりと浮く感覚に襲われそのまま気絶してしまった。

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