2話 あの日のキーホルダー

 校舎の中に入り、私は自分の靴を下駄箱に入れようとした。しかし、自分の靴を入れる場所がわからずどうしよかとワタワタしていると、


「ねぇ、大丈夫?」


「あっ、えっと、その……」


 私は、また彼女に急に話掛けられた為少し驚いた。しかし、折角また話掛けられたのだから靴をどこに置くのか聞いてみようとした。しかし、


(名前が……分からない)


 それもそのはず、まだ彼女とは出会って5分も経っていない。それに私は彼女に受け答えしかできていないのだ。当然その間に彼女の名前なんて聞ける訳がなかった。


(仕方ない……ちょっと緊張するけど名前聞くか)


「あの……名前聞いてもいいですか?」


「あぁ、ごめん、まだ話してなかったね。私、石園玲華いしぞのれいかって言うの。よろしく」


「あっ、石園さんよろしく。あっ、えっと、その、私の名前はね桜木明日香だよ」


「ふーん、桜木さんか……よし、覚えた」


(ふー、何とか名前が聞けた。それに自己紹介までできちゃった)


 私は少し緊張しながらも石園さんの名前を聞く事に成功し、石園さんと友達になるための第一歩を進んだ気がした。


「あっ、あのさ石園さん、申し訳ないんだけどこの靴って何処に入れればいいの?」


「えっとね、前郵便で届いた紙に書いてあったと思うけど……もしかして、わからない?」


(えっ……紙? ……郵便?)


 私はキョトンと石園を見つめたまましばらく固まった。


「わかんない……どうしよう……」


 私が石園に更に助けを求めたその時、キーンコーンと予鈴が鳴った。


「あぁー、もう、桜木さん適当に空いてるとこに入れて、ダッシュで教室に向かうわよ」


 石園がそう言うと私は一番端の空いてるスペースに靴を入れ、石園とダッシュで教室へと向かった。教室は幸いにも1階だった為予鈴が鳴り終わった直後に教室に入ることができた。


 とにかく予鈴が終わるまでに教室に入ろうとしていた為あまり気にとめなかったが石園とは同じクラスだった。しかも席に座ると偶然にも隣の席であった。


「ねぇ隣の席だね」


 石園が私の耳元で囁いた。耳がソワソワしてくすぐったかったが、少し嬉しかった。


「うん、そうだね石園さん」


 私と石園はそれから式が始まるまでの間お喋りをして暇を潰した。



 ◆◆◆◆◆



「桜木明日香」


 式が始まり私の名前が呼ばれる。


「はい!」


 大きな声を出し私はそれに応えた。



 ◆◆◆◆◆



 式が終わり学校を出た時、石園が私にこれからゲームセンターに行かないかと誘われた。


 もちろん私は、


「うん、行こう!」


 と言った。


 お母さんに友達とゲームセンターに行くと伝え私と石園は駅前にある大きなゲームセンターへと向かった。



 ◆◆◆◆◆



 ゲームセンターの中に入ると目の前にクマのキーホルダーのぬいぐるみがあった。私はサッと石園の裾を掴み言った。


「ねぇ、石園さん。このキーホルダー、お揃いでバックに付けない?」


「あっ、可愛いじゃん。そうだね、取ろっか」


 石園がそう言い500円を機械に入れた。


「私、こういうの得意なんだ」


 石園がクレーンを動かしキーホルダーを掴んだ。そのままキーホルダーが持ち上げられたその時、キーホルダーが落ちそうになる。しかし、チェーンがアームに引っかかり落ちなかった。


「すっ……すごい!」


 私は目をキラキラと光らせた。


「まぁ、こんなもんだよ」


 そう言って石園はまたクレーンを動かしまた同じやり方でもう一体をゲットした。


「すごいよ、石園さん。たった2回でキーホルダーを2個も取れちゃうなんて」


「そんな褒めないでよ。ほら、これ桜木さんのキーホルダー」


「あっ、ありがとう」


 石園からキーホルダーを貰い、私と石園はその後もゲームセンターで遊び、気づけばもう外は暗くなり始めていた。


「それじゃあ石園さん、また明日」


「うん、じゃあね」


 私と石園はゲームセンターの前で別れた。


(楽しかったなー。明日も石園さんといっぱいお喋りできるかな)


 私はスキップしながら家へと向かった。



 ◆◆◆◆◆



「ねぇ、この薬を使えばいいのね?」


「あぁ、そうだ。一応言っとくが――」


「わかってる、無くしたり他の人に渡すな、でしょ?」


「あぁ、そうだ。」


「それで、いつ作戦を実行するの?」


「あぁ、そうだな……4月●●●なんてどうだ」


「そうね、それがいいわ。それじゃあまた作戦が終わったら会いましょう」


 私は彼と別れ施設から出た。

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