パイロットの息遣いが聞こえるほどの、緻密に描写された大空浪漫

出力を上げる毎に高まるフレームの振動と雑然と響くビビリ音、風防にこびりつく油滴まで見えるような、圧倒的な解像度で描かれる緻密で鮮やかな情景については皆様のレビューの通りです、決してただ難しい言葉を並べているのではありません、作者さんは相当厳選して書かれているのではないでしょうか、この洗練された描写だけでも、酔えます、シングルモルトウイスキーのように心地よく高く酔えます。

それ以上に私が素敵に思ったのは登場人物の格好良さです、制空権確保編のツバメ01。戦隊長であり、冷静な判断力と高いリーダーシップを持っています。しかし、国が戦争へ突入する緊張感に戸惑いを感じている様子も描写されています。戦争の現実が突如として目の前に現れる瞬間、育てて来た部下達に戦闘命令を下す瞬間、その葛藤と義務感、一人の熱血漢としての思いと、守るものを背負う大人としての覚悟が瑞々しく描かれています、こういう人物をきちんと描き切るのは簡単ではないと思います。誰かや何かのせいにもせず自分が責任を取る、格好いい大人です。

04ちゃんは……未熟です、だけど当たり前です、これが初めてなのだから! リアルです、リアルですよ。開戦早々、本当に早々、戦場での死がどれほど突然かつ無情であるか目の当たりにしてしまった04、もちろんただちに戦争だからと割り切れるはずもなく、熟練の殺し屋として立ち回れるはずもなく。当たり前です新兵ですから……とはいえ勝ち戦の中で一人だけこんな結果を引いてしまうとは、あんまり兵士に向いてないのかも(武運的に)……そんな04が、とても愛しい。
そして03! ……いえ、これは書けません。

そんな大空のドラマが! 大画面に超高解像度で描き出されるのがこの作品です。
私の拙いレビューをここまで読んで下さった方にお礼を申し上げます、もしまだこの作品を読もうかどうか迷われているのでしたら、是非ともお読み下さい、お約束します、素晴らしい作品です。

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