第31話 父親の最期の姿

父親の葬儀のために急いで実家に帰った


「学校辞めないといけない……」

それしかなかった


母親は自分勝手な休職をした

妹は出稼ぎに行った

自分はアルバイトし始め


自分の奨学金とバイト代

妹のバイト代

それだけじゃ生活の足しにもならない


「辞めたくないのに。『夢を応援してする』とも言ったのに。どうしてそんなするの」


『父親が自殺した』という怒りしかなかった自分と

現実を受け止めないといけない自分

それで頭が真っ白だった


妹はバイト中だったから

バイト先に連絡をかけた


「こちら○○の××店でございます」

「あの妹はいますか?」

「いますよ、今代わりますね」


「もしもし?」

「もしもし、お姉ちゃん何?」

「あのさ……『お父さん自殺した』って」

「は?」

「だから『早く帰ってきて欲しい』って」

「バイト中なんだけど」

「終わるまで待ってる、新幹線の券も買わなきゃだし」

「はいはい」


妹はどう思ったんだろ

どっかから聞いた話で

妹は泣きながら接客してたらしく

「早く上がりなよ」と言われたらしい


その頃自分は

新幹線のチケット売り場に電話して急いで買いに行った

片手で数えられるくらいしか残ってなかったみたいだった


「良かった……買えた……」


隣の席にはならなかったが

帰れるだけマシだと思った


ちょうど買い終わった時

「(着信音)うん?誰だろ?あれ妹からじゃん。もしもし?」

「もしもしお姉ちゃん、今から帰って、荷物置いたら行くわ」

「え?バイトは?」

「上がらせて貰ったから大丈夫」

「あぁそう。今そっち行くわ」


そういったやり取りが終わって

電車を乗り継ぎながら両親の実家の駅まで行った

『学校を辞める』と宣言すると

スマホの着信音が鳴り止まず

『父親のお悔やみ』の連絡が友人や同期から来ていた

本当に自分のことを思ってから

『学校を辞める』

それが凄く嫌だった

『自分の将来の夢を壊された』気がして

父親のことは凄く嫌だった


駅では母親と父親の姉が待っていて

車で実家まで送ってもらった

実家に着き、仏壇のある部屋に通してもらった

そこに寝ていたのは

父親だった

その顔は

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あの子に光は届かない 蓮見藍菜 @hasumiaina

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