おじいちゃんの店とお菓子を守るため、たった今会った人と結婚します。

舞台は和風の異世界。
祖父を亡くした和菓子屋の娘、美月は、女性には相続権がないことから、店をなくし嫁に出されるという事態に。
店を守りたい美月としては、もちろんそんなこと望んではいませんが、嫌だと言って法が変わるものでもありません。このままみすみす店も自由も手放してしまうのか。そんな彼女の前に現れたのは、店で祭っている稲荷社狐でした。

人間の姿になってアドバイスする狐。彼が本作のヒーローかと思いきや、真のヒーローは別にいます。

店を訪ねてきた、祖父の弟子を名乗る青年、旭。彼なら、美月と結婚さえすれば店を継ぐことができ、和菓子だって作れます。
とはいえ、出会ったばかりでお互いのことを何も知らない二人。特に旭は戸惑いますが、この店と祖父の菓子を守りたいという思いは同じ。形だけの夫婦となって、店を存続させるため、二人の奮闘が始まります。

しかしですね、この旭が真のヒーローなのかと聞かれると、こう答えましょう。真のヒーローは美月です! あっ、もしかしたらヒロインかも。

冒頭にも書いた通り本作の舞台は異世界なのですが、実は美月、前世である現代日本で生きた記憶が早々に甦ります。
先に挙げた女性への相続権なしのように、現代の感覚からすれば、この世界には理不尽なこと、納得しかねることがたくさんあります。法はもちろん、そこに生きる人間だって、中には憤りを感じずにはいられない人がたくさん。
それでも美月は、そんな中自分にできることを探し、例え困難があっても挫けず乗り越える術を模索し続けます。
特に終盤、旭の秘密が明かされてからの彼女の奮闘は手に汗握ります。

理不尽や身勝手にまみれた世の中で、それでも強く生きる彼女の頑張りをご覧ください。

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