第5話 奇跡

あの日から5年が経った。

明美、何してるのかな?

僕は今、神木の前にいる。

明美がこの街を救ってくれた。

その感謝を言わないといけない。


「ありがとう」


僕は神木を後にした。

街に戻ると、村長が僕のお母さんに話しかけていた。


「最近の桜は3月には散ってしまうなあ」


「そうですね」


「桜祭りは明日というのに……」


「うーん」


明日、桜祭りが開かれる。

それなのに、この街の桜は全て散ってしまった。最近は地球温暖化が原因で気温が上がっているためだ。このままでは……。

明美が命を懸けてこの街を守ってくれた。

僕もやらなきゃ……。

地面に手を置き、力を注ぎ込んだ。

その瞬間、桜の木に蕾ができ、やがて満開となった。


「おー。賢治。お前は去年の神様が……。

忘れとったわ。ありがとう」


「どういたしまして」


僕はポケットに入った赤いバラを確認した。

花びらは残り3枚。

もう僕も死ぬのかなあ。

死んだら会えるかなあ。明美に……。

明美に会いたい。早く会いたい。

この5年間の思い出を話したい。


「え……何で?」


さっきまで3枚あった花びらが全て落ちていった。

もう死ぬんだ……。さっきの桜のせいか……。

お母さん、今までありがとう。

僕が去年、神様になって、嬉しいとか言ってくれたけど、本当は悲しいよね。

愛する息子の寿命が減る。

明美、待っててね。今、行くから。


「賢治、何してるの?」


後ろから聞き馴染みのある声がした。

振り返るとそこには明美がいた。


「何で?何で?僕はもう死んだのか……」


「私も賢治も生きてるよ。ほら」


全部落ちたはずの花びらが全て戻っていた。

そして、赤いバラから青いバラへと変化した。


「綺麗だね」


「うん」


「ねえ、明美。ずっと好きだった。

今も大好き。僕と付き合ってください」


「遅いよ……。私が死んだ時、賢治に告白できなかったことを後悔してたの……。ずっと。

やっと言ってくれた。

私を生き返らせてくれてありがとう。

私も大好きだよ。よろしくね」


青いバラの花言葉は奇跡。

2人は奇跡の再会を果たした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

奇跡の青い花 緑のキツネ @midori-myfriend

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ