第4話 寿命
目が覚めると私は無重力空間で浮いていた。
あれ?何でここにいるの?ここはどこなの?
『ここは神木の中だよ』
空間中に響き渡る声。
何があったんだっけ?
そうか。私は神様に選ばれたんだ。
神様になれば寿命が減る代わり、花に命を与えることができるようになる。
「私の寿命はどのぐらい減るの?」
私はまだ死にたくない。もっと生きたいよ。
『君が人や植物、動物に命を与えれば与えるほど、君の寿命は減っていく。これが寿命の目印になる』
そう言われて私の目の前に現れたのは赤いバラだった。その花びらは不思議なことに3枚しか無かった。
「どうやったら寿命が分かるの?」
『この赤いバラの花びらが全て落ちたとき、
君は死ぬ』
え……。その言葉を聞いた私は驚きで何も出来なかった。全ての花びらが落ちたとき、私は死ぬ。もう残り3枚しかない。まだもっと生きたいよ。死にたくないよ。
まだ賢治ともっといたい。
賢治にまだ告白もしてないのに……。
私は賢治のことが好きだ。
初めて出会った日から私は一目惚れした。
賢治からの告白をずっと待ってたのに……。
なかなか告白されない。私の事、嫌いなのかな。今日、花火大会が終わるまでに告白されなかったら、私から言おう。想いを伝えてから死にたい。
「ありがとう。神木様」
『うわーー熱い』
突然、神木が悲鳴を上げ始めた。
「何があったの?」
その瞬間、私は意識が無くなっていった。
「明美、大丈夫か?」
目が覚めると、天井は見慣れない所だった。
周りを見渡してようやく理解した。
ここは病院だと。でも何で病院に……。
「僕が運んだんだよ。明美をここまで……。
あの日、神木で火事が起きたんだ。
もう火の海が僕たちの手前まで来てて、明美が出てきたと同時に急いで抜け出したんだ。
危なかったよ……」
「賢治、ありがとう」
「でも、窓の外を見て」
私は恐る恐る窓の外を見た。
そこは一面中焼け野原だった。
「この家事で助かったのは30人。
酔っ払っている人が多くて逃げきれずに死んでいったんだ。僕のお父さんも……」
「私、行ってくる」
「どこに?」
賢治の質問には答えず、病院を抜け出し、ただ走り続けた。私が何とかしないと……。
私が神様なんだから。
そして、神木の目の前に着いた。
「明美、まさかお前……」
後ろから賢治の声が聞こえた。
「今までありがとう。大好きだよ」
私は地面に手を突き、力を込めた。
ポケットから落ちたバラの花びらが
1枚ずつ落ちていき、やがて全てが落ちると共に、私は倒れた。バラの種が私の横で転がっていった。
5年前に起こった火事で多くの犠牲者が出て、焼け野原になった。それを救ったのが水野明美。
彼女は神様となり、自分の命と引き換えに
火事で燃えた木は元通りにして、死んだ人間も蘇えらせた。そして、いつも通りの桜街に戻った。この街の英雄として語り継がれていった。
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