第2話 笑顔のその時
音楽を聞きながら、私は彼女との接点を考えていた。
どこかで出会っただろうかと。どこで出会っただろうかと。好きになってもらうほどの出会いをしただろうかと。笑顔が好きになるようなことを考えた。私はあまり人間関係を多く持たない。自分自身に魅力がある方だとも思わない。美人でもないし、可愛くもない。身長はややあるけど、そこまで高くない。学力も学年の平均を取った平均値そのもの。長所なんて無い。なにもない。
私はバイトもしていない。だからお客さんと店員という出会いはない。部活もしていない。部員同士の出会いも無し。委員会もしていない。だから活動中の出会いも無し。何もやっていないのだ、何もしていない。何をしているのだろうか、私は。
「ただいまー」
私は誰もいない家に帰り、そして自分の部屋へと向かった。自分の部屋は登校前に消灯した時のままで、電気を付けると明るくなった。私の桃色も、肌色も色が付いてよく見えるようになった。見る相手なんていないけど。
私は自分のベッドに倒れ込み、そしてスマートフォンを見た。何の変哲もない、変貌もないエスエヌエスやら動画投稿アプリの動画やらを見た。どれも普遍的で、面白くなくて、つまらなかった。世の中はこんなにも楽しくないのかと、辟易するほどであった。まあ、そんな事を考えたり、思ったりしている自分が一番面白くないことは、自分が一番わかっているのだけれども。こんなつまらない人間のどこが良かったのだろう。笑顔なんてあっただろうか。私の人生に、生きてきた中に笑っていたときなどあっただろうか。無愛想で、いつも仏頂面をしていた私である。何事もつまらなさそうに見えただろう。つまらない子供に思えただろう。今だって大人ではないが、子供でもない。そんな中途半端な、つまらない人間として生きている。
あっ、そうか。
私は引き出しの一番奥を探り、そして写真購入の封筒を見つけた。それは初夏の五月くらいに行われた学年行事の宿泊研修の写真を購入するための封筒であった。購入記録には一枚だけ、四百円の『全体写真』に『一』の数字が刻まれていた。私は取り出して見た。
そこには引きつった笑顔の少女と隣りに座った女の子を含めた、クラス全員の写った写真が一枚あるのであった。
それはおそらく花の名前にたとえられましょう 小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】 @takanashi_saima
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