第14話~うすらトンカチめ!!~
「信長さん、後続の軍が追い付いたみたいですよ?」
「……喜三郎、麗奈。後ろに注意しておけ!!」
真弥は味方が近づいて来たと思っていた。しかし信長は、立ち上る土煙に不穏なものを感じ取り城之内と麗奈に警戒を促した。
徐々に近づいて来る土煙の先頭を見れば、信長の思ったとおりコボルト達の軍団であった。
後ろから近づいて来るコボルト達にも、ゴブリンとオークが混じっていた。数はおよそ500ほど。
「ど、ど、どうするんですか、信長さん。このままだと僕達、あっという間に全滅ですよ!?」
「はっはっは、愉快、愉快。ワシ等四人に対してこれ程の数で『もてなし』てくれるとは、奴らも意外と
「殿、笑い事では御座らん。鉄砲の弾とて限りがございますれば、無駄撃ちも出来ませぬぞ。」
キョドる真弥に、楽しそうに笑う信長。呆れ顔の城之内となかなか愉快なメンバーだと、麗奈は思った。ついでに
「これだけ、火器が有るなら『爆弾』はどうしたの?」
信長と城之内に問いかけてみた。
「「「あっ」」」
真弥すら思い付かなかった事であるが、どうやら二人とも考えに無かったようである。
そうこうしているうちに、四人は囲まれてしまう。
「真弥、弾切れに備えてワシの脇差しを貸してやろう。よいか、
「つまり、『必ず生き残れ』と!?」
「そういうことじゃ。」
信長は、真弥に微笑みウインクをしてみせた。
麗奈は信長の仕草を見てまたもや
「だから非常時にイチャつくなって言ってるでしょうが~!!」
かなりご立腹のようだ。
信長はすまし顔で、
「この状況で、焦れば己の命が危なくなる。少しでも皆の心に、余裕を持たせようと思った訳じゃ。」
と、のたまう。
何か、カッコいいことを言っているようではあるが、なんとなくそれっぽい事を言ってうやむやにしようとしているようにも思える。
真弥が信長を見れば、真弥の視線に気付いた信長が視線を明後日の方向に向け、吹けない口笛を吹いてる。
「(信長さん…やっぱりそれっぽい事を言って話を逸らそうとしてたな。しかも、口笛吹けて無いし…)」
「それはさておき…」
「信長さん、話を逸らさないでください!!」
「麗奈よ。今は言い争っている場合では無いぞ!?こ奴らを倒し、舅殿を助けねばならんからのぉ。」
「しかし殿、これだけ周りを囲まれていては、身動きがとれませんなぁ。」
「信長さん、ここまで囲まれるとバイクが動かせません。」
囲まれている割にはどこか余裕のある城之内と、少し落ち着きを取り戻した真弥がそれぞれ口にする。
「まぁ確かに、喜三郎や真弥の言う通りじゃが……さてはて、どうするかのぉ?」
信長が打開策を考えていると、後方の敵部隊が爆発。黒い塊が立ち上る煙を突き破って真弥達の近くに落ちてきた。
黒い塊がスッと立ち上がる。
見れば忍装束を纏った女性であった。
「信長様、帰蝶様の命により助太刀致します。」
「
楓と呼ばれた女性は鋭い視線を真弥に向け近づいて行く。
「オイ下郎、これ以上信長様に纏わり付くな!!」
楓は、真弥の側頭部に右手の銃を突き付け罵倒する。
麗奈はAK-47を構え楓の頭に照準を合わせる。
楓は麗奈の動きを見て左手の銃を麗奈に向ける。
頭に銃を突き付けられた真弥は…
「ウージーだ!!
目をキラキラさせて、楓の銃を見て喜んでいた。
「ど、桐妙院殿…何故そんなに嬉しそうなので御座るか?」
「城之内さん、真弥は小さい時から鉄砲が好きなんです。まあ、あそこまでいけばほとんど病気みたいなものですけどね。」
なんとも言えない不思議そうな顔をしている城之内と、なかば呆れたような苦笑をしている麗奈が小声で話している。
「ところで楓、お主どうやってここまできたのだ?」
信長が楓に問いかけると、楓は真弥と麗奈に向けた銃を下ろし信長の方を向き片膝をつき、答えた
「はっ、信長様。後方の敵部隊に
「何!?焙烙玉だと?楓、まだ焙烙玉は残っておるのか!!」
「はい、腰に6個持って来ています。」
「でかした!!これでなんとか、舅殿の所に辿り着く事が出来そうじゃ。」
「ところで信長さん、さっきから気になっていたのですが楓さんは、何者ですか?」
麗奈は楓のことを、信長に聞いてみる。
「ん?楓か。楓は帰蝶の側付き女中じゃ。護衛も兼ねているがの。」
「あぁ、何処かで見たことあると思ったら、初めて帰蝶さんと会ったときに一緒に居た人だ。」
「フン、やっと気付いたか、うすらトンカチめ。」
楓の毒舌に引きぎみの真弥であった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
幻魔戦国記 道(タオ) @tao-aegs
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