第13話~コボルト達は生意気です~


 真弥はホイルスピンさせ、那古野の町からかっ飛んで行った。


「麗奈殿、麗奈殿はこの『ばいく』なるものを動かせるので御座るか?」


 心配そうに麗奈に尋ねる城之内に、麗奈は


「大丈夫です。」


 周りの兵士達も見惚れるような笑みを浮かべ答えると、真弥に負けじとホイルスピンをぶちかまし、那古野の町を飛び出した。

 この時、城之内は


「(麗奈殿、某にそのような笑顔を…その笑顔は某の『心の日記帳』に記録しておきますぞ。)」


 麗奈はそんなつもりで笑みを浮かべたわけではなかったのだが、想像力が逞しいうえに風圧で愉快な顔になっていた。



 

 真弥達が道三の元へ向かって爆走していると、コボルトの群れが襲いかかって来た。


「信長さん、コボルトの群れです。どうしますか?」


「相手にする必要無し。真弥、突っ切れ!!」


「了解。」


 真弥は空気抵抗を抑えるため、前傾姿勢をとる。

 信長も真弥にならい真弥の背中に身体を預ける。真弥の背中の感触は、ずいぶんと硬いものとなった。

 真弥と信長を見ていた麗奈は、頬を膨らませ


「城之内さん、飛ばしますので私にもたれてください。」


「れ、麗奈殿!?このようなところでそのような行為は、いささか不謹慎では?そ、某は構わぬで御座るが……」


 何を勘違いしたのか、『この』だの『その』だの言い出した城之内だが、麗奈は冷ややかに一言。


「城之内さんにそのような感情は持っていませんので。」


 城之内をバッサリと切り捨てた。

 城之内は小さな声で一言「む、無念」と呟き、麗奈にもたれた。

 麗奈と城之内のやり取りを見ていた真弥と信長は


「喜三郎、不憫な奴じゃ。」


「姉ちゃん、容赦ぇ」


 なんとも言えない感想を漏らした。

 そうこうしているうちに、コボルトの群れに近づく。


「信長さん、このまま突っ込むと速度が落ちる可能性がありますので、進路上の敵を排除してください。」


「お主の頼みなら仕方がない。『こぼると』なぞワシの敵では無いわ。」


 真弥の頼みを、信長が受け入れる。その際、信長の頬が赤みを帯び顔がにやけていたのを麗奈は見逃さず、


「この非常時に、イチャつくな~。」


 かなり『おかんむり』であった。

 しかし信長は、どこ吹く風の如く知らん顔で銃を構えると、進路上のコボルトの眉間を正確に撃ち抜いていった。

 信長の正確無比な射撃に、麗奈も驚いた。

 瞬く間に道は開け、真弥達は道三の元へとバイクを走らせた。

 途中、何度もコボルトの一団と遭遇するも必要最低限の戦闘に止め、先を急ぐ。

 ようやく、長良川に近づいた時コボルトの一団が現れて真弥達の行く手を遮る。


「よりにもよって、小鬼種まで現れたか!!」


「殿、それだけではございません。豚頭種もおりますぞ。」


「ゴブリンとオーク!?」


 コボルトとゴブリン、オークの軍団が道を塞ぐ。その数およそ1,000。


「厄介な事になった。この状況、どうしてくれようか。」


「豚も小鬼も手強いですからなぁ。殿、いかが致しますか?」


「ここを突破せねば、姑殿の救援どころではないか…」


 城之内と信長が思案をしていると、真弥達の後ろから地響きが聞こえ振り向けば土煙が上がっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る