四 花が咲く

「ねえ、アキラ。アキラは、どの花が好きなの?」


 初夏。白花屋敷の庭の片隅で、二人の幼い子供が白い花々を見ていた。

 白一色でも形は様々。木に咲く花もあれば、鉢植えに咲く花もある。

 その中で、問われた少年は日陰に群れで咲く花を指差した。


「ぼくは、あれ」


「えー? あれくさいし、かわいくないよ!」


 片割れの非難も意に介さず、少年は柔らかに微笑む。


「でも、あれって薬になるんだって。人のためになる花なんだよ。……ぼくも、そうなりたい」


「……?」


 年の割に達観した片割れの言葉が分からず、少女は首を大げさに傾げた。


「つまり、カスミが困ったら助けてあげるってこと」


「! ほんと!? やくそくだよ!」


 瓜二つの顔で、子供達は笑い合った。

 風が庭を駆け巡る。踊る風に乗って、日陰の十薬どくだみが揺れていた。

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馬酔木と十薬 独一焔 @dokuitu

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